アマゾンが定額サービスの Kindle Unlimited をリリースしたのは7月のことで、約2ヵ月が経過した。60万点あまりのタイトルで、85%あまりがKDPからの自動編入による自主出版ものなので、市場への影響も即効的なものではないが、最大の注目点は、これが著者の収入構造にどんな意味を持つかということだった。その最初の実績情報が伝わり始めた。
著者の収入増に結びつくか
ScribdやOysterと同様、Kindle Unlimited(以下KU)でも、ユーザーが1タイトルの10%を読んだ時点でカウントされ、著作権者には購入と同額が支払われる。月額利用料は9.99ドルで、最大10点のダウンロードが可能。最初の1ヵ月は無料試読期間となっている。
アマゾンは KOLL (Kindle Owners Lending Library) 200万ドルのためにKDP Selectファンドを原資として支払い、不足する場合に追加することになっているが、同社によれば、KUがスタートしたことで7月には50万ドルに加え、さらにて28万5,000ドルが「一時支払い」として追加された。支払の総額は6月と比べて3倍の250万ドルとなったという。つまり、通常の2倍がKUのために支出されたことになる。KOLLとKUという似たサービスを同じユーザーが使用することで重複が生じ、10%制限の計算上の混乱をきたしたようで、一時支払いはそのために必要になったようだ。貸出1件当たりの支払額は1.8ドルと発表されている。
KUは商業出版社からの仕入れ価格を定価の60%としているが、この支払いも前述のファンドから行われているかどうかは不明だが、専属契約を前提とするKDP Selectのファンドと通常の出版社への支払を同じ原資から行うとは考えにくい。KDPのファンドに関していえば、月200万ドルに加えて50万ドルの追加を行ったことは、KUの利用が予想を上回ったことを示している。しかし、最初の月(無料)でもあり、このペースが続き、著者の収入増につながるかどうかを知るには、3ヵ月はかかるだろう。
KOLLとKUによって、売上レポート、あるいはベストセラー・ランキングにも影響がある。多くの著者は貸出数が急増したことで、販売を100とすれば貸出が80にもなったと述べている。アマゾンはKOLLのダウンロードとKUの貸出のデータも更新する予定。◆(鎌田、09/09/2014)
参考記事
- Kindle Unlimited adds triple bonus for authors, By Roger Packer, Blog, 09/09/2014
- Amazon boosts KDP Select fund to $2m as it adds Kindle Unlimited subscriptions, By Roger Packer, Blog, 09/09/2014
- What Kindle Unlimited is doing for author earnings, by Publishing Technology, 09/04/2014
- Is Kindle Unlimited friend or foe to indie authors and small publishers?, by Publishing Technology, 07/30/2014