アップルが電子雑誌製作企業Prssを買収

Prssアップルにとって、コンテンツ戦略がますます重要となっている中、最近オランダのデジタル雑誌製作ツール企業Prssを買収したことが報じられた(TechCrunch、09/23)。その製作技術が目的とすると、iBooks Authorでは雑誌では無理と判断した可能性が高い。アドビDPSに対抗する製作環境がどういう形で登場し、軌道に乗せられるかは、アップルのモバイルビジネスに少なからぬ影響を与える。

アドビDPSプラットフォーム対抗への布石

TRVL-for-iPad同社のコメントは、こうした噂に対するいつもの「アップルは時に小さなテクノロジー企業を買収することがありますが、基本的に、その目的や計画などについてはお話しておりません。」という紋切り以外ではないが、事実は確認されたことになる。Prss(プレス)は2010年以来、iOS上でのオーサリング技術で評価されていた企業で、先進的な対話型インタフェースを持つ電子旅行雑誌TRVLでいくつかの賞を得ていた。Prssはその経験からiOS向けデザイン・ツールも開発しており、アップルが2012年にMac OS X向けにリリースしたiBooks Authorと同じく、WYSIWYGベースのものであると推測される。アップルが買収するからには、もちろんアドビDPSに対抗できるほどの中身のあるものでなければならないだろう。

iPadで当初最も期待されたコンテンツは、ニュースメディアと電子教科書だった。電子雑書の熱狂と幻滅は見てきたとおりで、教科書も同じ。Webサイトが急速にモバイル対応に移行し、E-Bookも浸透したのに対して、これらは潜在市場を持て余してしまっている。原因は単純ではないが、従来のスキルでは制作が難しく、コストも高いことは、つねにトップ3には入っていた。それに現在のところ、iPad雑誌のデフォルト・ツールは Adobe Digital Publishing Suiteである。アップルはともにDTPを築いたこの企業をパートナーとする気はなく、アドビは別のプラットフォーム戦略を描いているので、この状態は好ましくない。アップルはデジタルファーストのスタートアップを物色していたと思われるが、Aquafadasは、Kobo/楽天グループの所有だ。

ipad_mag雑誌のベースにもなると思われたiBooks Authorが、そうなっていないのは、おそらく単行本(シリーズ)制作の環境と、雑誌製作の環境へのニーズが異なるためであろう。広告主とのインタフェースという、現場経験が必要な領域もある。Prssの技術はiBooks Authorのように、Macで無償提供されるか、あるいはiBAに吸収されていくかは不明だが、おそらくは前者だろう。

しかし、デジタル出版において製作は一部に過ぎない。最も難しいところは、制作・営業を含めたワークフローを構築する部分だ。アドビは時間をかけてサービス・パートナーのネットワークを築いてきた。紙に偏っていて動きは鈍いが、広告スポンサーもクライアントに持っており、ともかくDPSでデジタルを進める体制をつくっている。アドビのような地道なマーケティングは、アップルには出来ない(あるいは採用しない)と思われるが、その場合の代替案が必要になるだろう。おそらくはiAdなど広告事業がサポートするものと思われる。(鎌田、10/02/2014)

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