アシェットが著者・代理人へデータ提供

Hachette-Book-Group-LARGE1アシェット社は10月9日、販売データを出版社、著者、代理人など関係者と共有するデータ・プラットフォーム・プログラム The Author and Agent Portal を発表した。遅まきながら、アマゾンとの紛争の長期化に備えたシフトと言えるだろう。これまで著者向けの販売データは、もっぱらアマゾンから提供されてきたからだ。

“アマゾン依存”からの脱却目指す

アシェットのポータルは、取扱い全書籍の販売状況に関する社内レポート、Nielsen BookScan の週間データ、オンライン版権窃盗レポート、12ヵ月先までの刊行予定、その他を提供する。エージェントは著者が閲覧できる全データのほかに、定期の版権料計算書を受け取ることになる。アシェット社ではこれが同社での出版体験に透明性を加えるもの」としているが、販売データの提供サービスが出版社の役割であることを認めたことを意味する。一般に公開する情報ページもあり、刊行本の検索、メタデータ、季刊カタログなどが含まれる。

今日「コンテンツは王なり」という脳天気な人はほとんどいなくなった。その価値が場に依存すること、デジタルな場を仕切るのがもっぱらアマゾンで、それはデータの力による、ということが広く知られるようになったからだ。王であると考えたのは、それが「知られる(べき)」存在であり、それは何にもまさると信じていたことを意味している。デジタルの海の中で見つけてもらうことの難しさを知り。いま「王」の関係者たちは自信を喪失した。しかし、ほんとうのところ「コンテンツの主=王」は誰だったのだろう。よほどの有名作家を例外として、著者ではなさそうだ。出版社は著者を王として担ぎながら、事実上自分をそうしたものと考えていたようだ。

デジタル時代において、知(ること)こそ力であり、人々に知られることに先行する。出版社と著者、代理人による旧出版秩序の護持者を自任するアシェットだが、これだけで「著者、読者とアマゾン」のエコシステムに対抗できるとは考えていないのは結構なことだ。デジタルの王であるアマゾンの力を相対化するには、「知ること+共有すること」において質的に優る必要があるからだ。しかし、「著者は第一の顧客」と唱えて情報共有を重視してきたアマゾンはもとより、サイモン&シュスターにも遅れたポータルは、遅すぎないか。 (鎌田、10/14/2014)

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