アマゾンが新条件でS&Sと契約締結

S&S_logo2サイモン&シュスター社がアマゾンとの間で、2015年1月に発効する新しい契約で合意したことをWall Street Journal (WSJ)やBusiness Insiderなどが報じた。内容は明らでないが、出版社が価格設定権を保持する、かつての委託販売制に近いものだという。これがアシェットや他の大手との交渉に影響を与えることは必至と見られる。

実利を得た(?)サイモン&シュスター

Amazon_done報道によれば、S&S(CBSグループ傘下)はアマゾンとの間で、印刷本とE-Bookの両方について販売条件で合意した。S&Sは小売販売価格を設定するが、アマゾンは「一定の条件」の下で割引販売が可能になるという。つまり、違法カルテル事件判決で2年前に無効化された委託販売と、現行の卸販売の折衷による新モデルということになる。S&S社の書籍はアマゾンのWebサイトで販促される。アマゾンが出版社に対して強く主張していたことは、消費者が買いやすい低価格が売上を最大化する、ということだった。小売価格の決定権では必ずしもない。

アマゾン関係者は10月20日にこの報道を確認し、「この合意は、読者に低価格で販売する経済的動機を、とりわけS&S社に対して生み出すもの」とコメントしている。ビッグ・ファイブの一角、S&Sと合意に至ったことは、アシェットに対するプレッシャーになることは間違いない。両社と取引があるニューヨークのエージェントはそうみている。アシェットは、アマゾンとの契約が失効した5月以降、最大チャネルでの予約、値引が停止となり、出荷遅延も続いている。一部がアップルやKoboで代替されたとしても、機会損失は業績にも影響を与えるものと推定されるが、今後の契約で著者が同社を敬遠することになれば、状況は危機的になるからだ。

ReidyS&Sのキャロライン・ライディCEO(写真=右)は、著者やエージェントへのメールの中で「新契約は、弊社と皆様の共通のテーマである、市場における私たちの知財の価値を護ることを第一としたものでした」と述べ、「E-Book販売から得られる収入について、弊社と著者にとって有利な配分を確保できたことは、非常な喜びとするところです」と満足の意を表明している。アシェットの“抵抗”によって実利を得た可能性は十分にあるだろう。

アマゾンはS&Sに続いて、世界最大の出版社であるペンギン・ランダムハウス(PRH)、およびマクミラン、ハーパーコリンズとの交渉に臨む。アシェット社の有力な作家で、反アマゾン・キャンペーン(Authors United)の急先鋒でもあるダグラス・プレストンは、アマゾンがアシェットにもS&Sと同様の条件を提示したのかどうか知りたい」と述べている。アマゾンはいざ知らず、S&Sが最大の果実を手にしたことは確かだろう(本件については、各界の反響を分析してまた取り上げる予定。)(鎌田、10/21/2014)

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