B&Nがマイクロソフトと“協議離婚”(♥)

microsoft-nook-250x60B&Nは12月3日、マイクロソフトと共同出資して設立したNook Mediaの持ち株を、約1.25億ドル(現金は6,240万ドルで残り半分は株式)で引き取ることを明らかにした(→ロイター報道)。2年間の合弁に終止符を打ったMSは出資額(3億ドル)の大半とこれまでの投資金額(5億ドル以上?)を失うが、3年以内に売却した場合には売却益の22.7%を得る。B&NはNookの分離独立を2015年夏をめどに行うとしている。『全文=会員』12月中特別公開

何もできなかったNook

divorseマイクロソフトの撤退は予想通りだが、2015年3月のはずだったNookの「独立上場」は夏をめどに行うとしている。マイクロソフトから自由にはなったが、まだ「めど」が立たないのだろう。同社はB&Nの株式270万株を手にすることになるが、あまり意味を持つとは思えない。他方でピアソン社はなお5%の株式を保持している。

上記の発表は、B&Nの四半期(2Q)決算発表の中で明らかにされた。この直近の数字は、売上が前年同期比2.7%減の17億ドル。利益は7,600万ドルから10.5%減の6,800万ドルと冴えないもの。Nook部門は売上が41%減の6,400万ドル。新製品がなかったハードウェアは63%減の1,870万ドルと最低記録を更新、コンテンツも21.2%減の4,520万ドルと底が見えていない。消費者の流出が始まっている可能性もある。

NookにおけるB&NとMSの合弁は明確な失敗であり、巨大ソフトウェア企業とコンテンツ企業の間のシナジーの難しさを示すことになった。Nookタブレットの赤字を補填するために、デバイス戦略でも海外展開でも身動きが取れず、貴重な時間を失った。Windows 8やタブレットはリーディング・デバイスとして機能せず、しかもiOSとAndroid版は米国と英国に制限されたため、何も出来なかったのである。おそらく合弁によってNook事業の独立性(と創造性)が失われたことがすべての原因であると思われる。筆者も昨年秋のフランクフルトのブースで、VPクラスと話をしたことがあるが、まったく意欲を感じず、企業として末期症状であると感じた。

巨人の「死の抱擁」を逃れたNookだが

ハードウェア、ソフトウェア、コンテンツの相性は決して良くないことは知っておいた方がよい。それぞれ互いに必要とはするが、対等の関係とはならないどころか、バランスを取ることすら難しいのだ。前者はユーザーを囲い込むためのコンテンツを必要とするのだが、コンテンツは本質的に拘束を嫌う。iOS上のコンテンツ市場が繁栄しないのもそこだ。調整し、協力し、機能させていくのは生身の人間にかかってくるのだが、それぞれが別の組織に属し、価値観も異なるのだからうまくいくほうが難しいのだ。「顧客第一」というコンセプトだけで統合できるほど甘くはない。

アマゾンがこれまでのところプラットフォームの持つ毒をコントロールしていられるのは、KindleプラットフォームをKindle OSからも独立させる、開放型同心円構造を全員が意識しているからだろう。しかし、組織が巨大になり、社員がブランドに愛着=執着を持つようになると、バランスは崩れる。マイクロソフトやアップルはそうした年齢に入ってしまった。アップルとIBMの提携が何か生み出したとしたら驚き以外ではない。

ともかくNookは「死の抱擁」から逃れた。失われた2年間の間に、市場は一変してしまった。シェアは10%を切るくらいかもしれない。それでも回復は可能だ。2年間も愚行を続けて、まだ市場に残っているのは、消費者の期待があるからだ。トップの人選しだいだろう。(鎌田、12/08/2014)

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