拡大する自主出版世界 (1):教科書エディタKTC

KDP EDUアマゾンは1月22日、KDPの新部門KDP EDUを通じて教材用オーサリングツールKindle Textbook Creator (KTC)ベータ版を公開した(→リリース)。アップルiBooks Authorに相当するもので、それ以上が期待できるわけではない、EPUB3でなくPDFをベースにKindleのE-Textを構成する点も前向きではない。しかし、KDPを背景にし、かつ複数のデバイスをサポートする点が大いに違う。

PDFとEPUBの中間?

E-Bookは読者側のリーダと制作側のエディタで機能する。両者をつなぐのはフォーマットだ。アマゾンはKindleという専用リーダを提供しているが、エディタは特別なものを必要としていなかった。これまでのKindleフォーマットはHTML5をベースとしてEPUB3との近縁性を維持しており、付かず離れずの関係にあったからだ。それでも、コミックや絵本ではツールをKDP作家用に提供している。制作のプロではなく著者用とする点では一貫している。しかし例外がある。教科書だ。構造性が高く、コンテンツとレイアウトとの関係が緊密なので、そのままレプリカにする以外、既存のタイトルの利用が困難なので、PDFを使っている。これはデジタルのメリットを利用することはできない。

Kindle Text CreatorKTCはレプリカのデジタルへの移行を図るためのツールだ。試行錯誤の末のものなので、迷いはないだろう。ユーザーにとっても新鮮なものではない。もちろんKindleエコシステムの一環だが、教材制作者および教師がKindleクラウドサービス(とくにストア)を利用することを前提とし、Kindle FireとともにiPad、iPhone、Android、Mac、PCをサポートする。機能的には、ハイライトをカテゴリ別カラーで表示するほか、構造化されたノートブック機能、フラッシュカード(暗記メモ)、辞書・Wikipedia記事へのアクセス、複数デバイス間の同期が可能になっている。しかしビデオなどのリッチ・コンテンツは含まれておらず、これだけでは不十分。アマゾンによれば、正式版までにさらに多くの機能が追加されるというので、iBooks Authorとの機能比較はそれを待つべきだろう。

ツールを評価するには、想定する環境、プロダクト、ユーザーにとってどう役立つかを問題にすることになるのだが、アマゾンのツールの場合は、アマゾンのアプリの中と決まっている。そして多くの機能はアマゾンのクラウドを通じて利用することになるし、その限りでは過不足ないものとなることは分かっているので、単独で取り上げる意味はあまりない。これはアドビなどのプロ用製品と競合するものではなく、Kindleで出版しやすくするためのものだ。現段階で言えること、まず注目すべきことは以下の3点だと思われる。

第1に、アマゾンは現存する膨大な“PDF資産”を継承する(つまり紙の教科書の転用)ことをE-Text制作環境の主軸に、デバイスではMac/PCをメインにしたということ。モバイルは必ずしもメインにならない。

第2に、これまではもっぱらフィクション・ライターに活用されて一大市場を築いてきたKDPプラットフォームで、E-Textを扱うということ。Kindle Unlimited/Lending Libraryでコンテンツを流通させることをも意味する。

第3に、前号で科学技術医学(いわゆるSTM)出版について述べたように、STMと教科書・教材・専門書市場とは隣接しているから、KDP EDUは「専門書/学者・専門家の自主出版」という性格も有している。KDPの性格は大きく変わった。

以下、これらを具体的に検討してみよう。→(2)に続く (鎌田、01/27/2015)

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