iBooks 4年目のリスタートの成果

iBooks_newNookの凋落は止まらず、アップルiBooks StoreにKindle対抗としての期待がかかることになった。iOSバンドルにより広大なユーザーベースが確保されたことで、ようやく出版界が期待してきた本来のプラットフォームとして登城しつつあるiBooksの現状を担当者が語った(PP, 1/16)。すべてはアップルがどれだけ本気でやるかにかかっている。

iBooksバンドル化でユーザーは週100万人ペースで増加

Keith-Moerer-510x383先週開催されたDigital Book Worldで、アップルiBooks Store担当ディレクター、キース・モーラー氏が登場し、Publishers Lunchのマイケル・ケーダー氏とのインタビューに答えた。一問一答はこちらで読めるが、ポイントだけを整理してみよう。

  • (iBookstoreの現状)iPhone 6/6+iOS8発売以降、iBooksの売上は急増している。9月以降、平均して毎週100万人の新規ユーザーが増加している。ユーザーの読書習慣は把握しておらず、大画面のiPhoneの貢献のほどは不明だが、iPhoneを通じた売上はiPadを超えている。
  • (マーケティング)出版社からの販売協力金(co-op)は受け取らないので、販促に関して弊社にコンタクトするには私宛にメールするのがよい。
  • (アクセス)販売の多くは分野別表示のページから来たものだ。FacebookやTwitterなどソーシャルメディアも使い、iBooks Storeの中から様々な情報発信を行い、メディアやソーシャルイベントを使って人々にアクセスしている。
  • (iTunesとの連携)とくに誇れる点として、iTunes Movieストアとの連携が挙げられる。映画がiTunesで公開された時(劇場公開後90日)がとくに効果が高い。過去18ヵ月間はジャンル・フィクションに力を入れてきた。ノン・フィクションは強いところだが成長は期待ほど速くない。ここでもiTunesの音楽と連携する。ジャズやクラシックのファンはデジタル読書になじみにくい層だが、そこでも移行が起きている。絵本や児童書などでも。そうした現象が起こることを想定している。速くはないが着実だ。
  • ibooks_ios_7_redesign__store_by_hamzasaleem-d6std1v(EPUB3)弊社はEPUB3を支援している。出版社の採用も広がっているが、均一にではなく、一部が他よりも積極的だ。
  • (デジタルの減速について)予期していなかったことではなく、一時的な停滞は他のデジタルビジネスでも起きている。われわれは成長分野にフォーカスしている。
  • (北米以外の市場について)英国、ドイツ、フランスが最も大きい。他の欧州、東欧などではとくに大きな市場はない。しかし集合として見ると3番目の大市場と言える。最速で成長しているのは日本だが、大部分が日本語コンテンツで英語は一部だ、ラテンアメリカは遅かったが、一部で勢いがつき始めている
  • (海外出版社の米国進出)カナダのストアに出店しているフランスの出版社が成功している。われわれは米国内でのスペイン語出版物に注目している。
  • (学校/教育市場)アップルは学校で幅広く使われており、教育者と協力していくことは弊社の使命でもある。電子教科書の規模はまだ小さいが成長している。この市場は教科書だけではなく、教材として有用な一般図書も含まれる。潜在市場は非常に大きいが、まだ表面をなぞったとさえ言えない段階。
  • (iBooks Authorについて)本来は学校の教材向けに開発されたものだが、それに加えて商業出版社でも使われている。例えば写真アーカイブのGettyはこれで写真カタログを作成して無料配布している。映画スタジオやTVネットワークも映画や番組宣伝資料を作成している。
  • (自主出版について)独立系出版者はわれわれの最成長分野で、このビジネスに大いに注目している。直接(つまり独占的に)協力している出版者の数も増えており、Smashwordsなどのように独占的契約を望まない人々とも協力している。
  • (自主出版の価格設定)無料提供を制限するようなことはしていない。有償読者獲得の手段としての無料提供は有効であると考えている。

読書環境の改善に期待

アマゾンの圧勝に終わったE-Book革命第一幕、最大の番狂わせはアップルの“不振”だろう。出版が他のメディアに比べて難しいという点は差し引くとしても。圧倒的な潜在ユーザーベースに対して、パフォーマンスはあまりに低い。大手5社との「価格談合」とともに参入した失敗は、その後もトラウマのようにアップルの活動を制約したことは間違いないが、それもすでに過去のものとなった。iOS7からデザインも一新され、あのアップルとはとうてい思えないキッチュなインタフェースはもうない。キース・モーラー氏の発言からは、リセット後の新たな意欲が感じられる。

iBooksはもちろん、iBooks Authorも可能性を生かし切れていなかった。マーケティングの方向も明確ではなかった。EPUB3の活用、つまりオープンとクローズド環境の“半透過性”の提供も見えていない。ユーザーが期待するDRMフリーへのイニシアティブも。ビッグデータ駆動のアマゾン・マーケティングに対して、(デザインはよいが)古風な観さえあるカテゴリー・ページ中心のストアで対抗できるかも心配になる。ツッコミどころは沢山あるが、それでも数千万規模のグローバル・プラットフォームが始動したことの意味は大きい。わずかな改善でもE-Bookあるいは出版にとって大きな影響を与える可能性があるからだ。アマゾンも反応するし、第3勢力の目ざすべき方向もはっきりしてくる。 (鎌田、01/20/2015)

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