学術出版の世界的再編が始まった

Springer+Macmillan学術書(STM)出版の世界的大手であるシュプリンガーとマクミランの当該部門の合併が1月15日に、親会社のBCPとホルツブリンクから発表された。この分野におけるペンギン・ランダムハウスの誕生を意味するが、デジタルによる市場の流動化、グローバル化に対応した戦略的再編で、STMという枠も超えている。

シュプリンガーとマクミランのSTM部門が合併

Springer_books欧米ではSTMは商業出版とは区別され、教育出版やB2B(ビジネス出版)に隣接している。しかし大手はメディア・グループの傘下にある。今回合併が決まった Springer Science+Business MediaはBC Partners (BCP)が主導するファンド(本社ロンドン)、Macmillan Science and Education (MSE)はドイツのHoltzbrinck Publishing Group(ホルツブリンク)にそれぞれ属している。BCPは中長期の投資を主体とするプライベート・エクイティ(PE)ファンドで総資産170億ドル。一時(1999-2003)はベルテルスマンの傘下に入ったシュプリンガーは、またドイツ系のホルツブリンクの傘下に収まった。

合併による新事業体はホルツブリンクとBCP+ファンドの共同支配下に入り、前者が53%を保持する。新会社のCEOはシュプリンガーのデルク・ハーンク氏で、マクミランSEのアネット・トーマス氏がChief Scientific Officerを務める。合併は関連する独禁当局の承認を得た後に正式化される。BCPのワルゲンバッハMP (Managing Partner)は、PEファンドとファミリー・ビジネスのホルツブリンクによる合弁が事業の中長期的成長にとって理想的なものだ、と述べている。世界のメディアビジネスは、非上場企業による支配が主流になるのかも知れない。

PEファンドが学術系、B2B系出版社を次々に買収

merge商品(学会誌、書籍、データベース、および研究開発向けワークフロー・ツール)と市場(学術・研究機関、個人)の構成に関しては補完的であり、合併によってさらに研究者、教師、実務家の信頼を増すことになる、とリリースは述べている。ハーンクCEOは、合併のメリットとして新製品開発や教育以外の新分野進出への投資拡大を上げている。おそらく技術系などのB2B出版を含むものと思われる。

米国のB2BメディアにおけるM&A規模は、2013年の4億5,200万ドルから32億ドルと6倍にも跳ね上がった。大半はPEファンドによるものと見られている。100年以上の歴史を持ち、ほとんど成長余地などないと考えられているB2B出版に、「成長資金」を供給するはずのPEファンドが集中しているのである。それも、デジタルにはこだわらずに老舗の実務出版社にも。ようするに、ファンドが注目している資産は「コンテンツ」などではなく、ズバリ読者と広告主と考えたほうがよいだろう。不況で疲弊し、デジタルに乗り切れない現状だからこそ、B2Bメディアのオーナーも手放す気になっている。

これは世界的な出版=メディア再編の一環と考えなければならない。10年を経ずに、世界の出版界は(商業出版と学術系、実務系を問わず)顔のないPEファンドに支配されていることになるだろう。もちろん日本も例外ではない。  (鎌田、01/22/2015)

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