米国最大の書店でNookを保有するB&Nは3月10日、2015年度3Q(2015年1-3月)の決算を発表し、Nook部門の不振が続いていることを示したが、同部門の分離・売却は強く否定した。もはやKindleを追っていた面影はなく、生存のために苦闘しているが、デススパイラルから抜け出す遠心力は得られていない。なぜここまで至ったのか。
売上半減、コンテンツも4割減
全体の売上は1.7%下落して19.7億ドル、税引前利益は1億9,740万ドル。同期間中の店舗閉鎖は13店だった。書店とNookを合わせた売上は1.0%減の14億ドル。秋までに分離する方針の大学書店は5億2,100万ドル。Nook部門はハードウェアとコンテンツ、アクセサリを含めて1億ドルを切り、50.6%減の7,800万ドル。E-Book販売の落ち込みは2015年度3Q(2015年1-3月)も止まらず、前年同期比29%減の4,100万ドルと危険な水準。ハードウェアは63%ダウンだった。サムスンとの提携も効果を発揮していないようだ。
B&Nのマイク・ヒュースビーCEOは、四半期決算発表後のインタビューで、この不振は「困難な環境」によるものだが、挽回策を模索していると弁明している。しかしE-Bookは顧客にとっても重要で「B&Nにとって不可欠」と強調し、大学書店の分離以後の同社の事業について、書店とE-Book (Nook)のハイブリッドで行く方針であることを表明した。とりあえず、Nookには買い手がつかなかったようだが、無駄に時間を使ったものだ。
B&Nは引続きNook商品の販売にコミットし、経営陣はNookの成功のチャンスは書店との結びつきから生まれると信じている、とCEOは語った。ともに読書にフォーカスするこれらの事業は、顧客やビジネス・パートナーが重なっている。Nookを放棄する考えはなく、顧客に印刷本とE-Bookの両方を提供することが現在の計画である、というのである。これは本誌を含めて、多くの人が言ってきたことで、いまさら何を、というていのもの。これまでなぜできなかったか、どうすれば出来るようになると考えるかを示さないとユーザー離れは止まらないだろう。
ネット上の個人を相手にするオンラインストアは、来店客を相手にする書店の販売方法では対応できない。オンラインストア/読書環境では、ユーザーの読書体験(UX)という独自の、一貫したサービス環境を構築し、継続的に改善していく必要があるのだが、B&Nはそれに成功していない。重要性を知る人も少ないのではないかと思われる。私見では、そのUXにリアルな書店での体験をシームレスにつなげることができれば独自の価値を提供できるはずで、アマゾンにも長期的に対抗できるはずだ。
B&Nとは対照的に、大手書店(ターリア、ヴェルトビルトなど)の提携でドイツに生まれたTolinoは、短期間にアマゾンに迫るパフォーマンスを示し、欧州全域への拡大を目ざしている。NookとTolinoを比較することは、Kindle対抗勢力の可能性を知る上で重要と思われる。◆ (鎌田、03/17/2015)