Wundrというカナダのスタートアップが「革命的デスクトップ出版プログラムと称する Playwrite をデビューさせた(→iTunesストア)。E-Book/E-Magの製作+出版支援をサポートするのは、Macベースのソフトウェア(50ドル)とクラウドサービスだ。機能やサービスの詳細は不明だが、出版テクニカル・サービスのパターンとして注目しておいた方がよいだろう。
デスクトップ製作から出版管理までをサポート
Wundrはカナダ・バンクーバーで2012年に創業したE-Book製作+出版支援を行う会社だが、Playwriteは、アマゾン、Kobo、iBooks Store、Google playの各ストアのフォーマットに対応するEPUB3コンテンツを作成するもの。ユーザーはこれらのチャネルを通じて出版するだけでなく、販売分析や価格変更を1ヵ所で行える管理ソリューションが利用できる。詳細はまだ発表されていない(目下照会中)。アップルのiBooks Authorは無料で高機能を提供するが、iBSでしか売れないので、iOSユーザー向けの出版しかできない。Playwriteはその溝を埋めることを狙っている。
同社はマルチメディアも扱えるとしているが、現実的問題として、文字中心のシンプルなコンテンツなら変換も可能だが、固定レイアウトや構造性の高いもの(教科書など)では、自動変換は現時点で不可能だ。これも出来ればすばらしい。構造が複雑になれば、まだiBA/iBSやKindleの専用ソリューションが現実的だ。Kindleとしないで「アマゾン」としているのが、PoD(あるいは印刷版)を含むということかどうかは不明。
かつて出版は、書店に本を並べるのがゴールだった。活字と印刷・製本というハードルを越えたら、あとは「結果」を待つしかない。今日ではハードルが低くなった代りに、結果は待つものではなくなり、ゴールは見えなくなった。結果に責任を負う人々は、販売/拡散目標を自分で達成する努力が要求される。安く簡易な手段が増えてくるにつれて努力水準も高くなる。そうした意味で製作+出版(販売・管理)はもはや必須と言える。
その昔のDTPは、活字を使ったページ版下をデスクトップで作成して「革命」と呼ばれた。今日では紙からデジタルまで、あらゆる本のフォーマットをつくって出版まで手伝うことが要求される。誰にでも手を出せる価格で。もし軌道に乗れば、Wundrの製品+サービス・ソリューションは、たしかに現代の出版ソリューションのプロトタイプと言えるものだろう。しかし、「悪魔は細部に宿る」で、現場で直面する細かい問題を現実的に、あるいは長期的に解決していくことは簡単ではない。◆ (鎌田、03/05/2015)