出版調査機関 BookNet Canada (BNC)の調査によれば、カナダの出版社の66%がE-Bookを消費者に直販している。2013年には42%だったので、1年で24ポイント上昇し3分の2に達した。まだ売上の大半をアマゾンやKoboなどの外部のストアが占めているが、直販の増加は読者との結びつきを求める出版社の意思を示している。
周回遅れも着実にデジタルを受入れる
5月12日に発表されたBNCのレポート (The State of Digital Publishing in Canada 2014)は、2015年初の時点でカナダの(出版社による)E-Book出版の全体状況を捉えたものでPDF版が公開されている。プラットフォーム、フォーマットからマーケティング、制作体制までをバランスよく的確にデータ化しているので、比較的地味な市場ながら貴重な資料と言える。調査対象は大部分がカナダ出版協会(ACP)の会員で、年間売上1,000万ドルが90%を占める。
米国と隣接するKoboの母国カナダにおいて、出版界も市場もデジタル化はむしろ遅々としていたが、出版界も着実に受け入れつつある。BNCによれば、カナダの出版社の93%はE-Bookを出版しており、2年前から4ポイント上がった。52%は前年比で売上が増えていると回答しているが、横ばいないし減少が48%とほぼ拮抗する。
65%は印刷版と同時発行している。紙を先行させるのは29%。デジタル先行も6%ある。印刷版のデジタル化率を見ると、100%が15%、76%以上も同じく15%で、51-75%が19%。つまり51%以上がほぼ50%。1-25%は26%だ。デジタル版を出す目的は、当然ながら販売部数の拡大と読者の要求への対応だ。出版社の大部分(69%)は売上に占める比率が10%以下だが、17%は11-20%。
E-Bookの直販についての設問は今回初めて加えられたものだが、流通サービスを抜いて2位となったことが注目される。出版社のサイトでの販売は、PayPalなどの小額決済サービスと連動したファイル・ダウンロード用プラグインの登場で普及した。出版社が直販を行うのは、可能な限り、読者とのつながりを維持しておくことが重要だからだ。数は少なくとも登録読者の存在は、次の出版を容易にする。逆にストア・プラットフォームの利用は、幅広い消費者にアクセスする可能性を提供するが、注目を集め、販売にまで結びつく可能性は非常に低い。小規模出版社にまで直販が広がっていることは、その必要性の認識が広がっていることを示している。◆ (鎌田、05/19/2015)