米国で停滞しているKoboは5月27日、米国書店協会(ABA)との新しい提携プログラムを発表した。“eRead Local”と称する新規会員獲得にインセンティブを提供するこのプログラムは、今夏にスタートし、100日間継続する。デバイス販売にフォーカスしたものの機能しなかった旧プログラムを見直したものだが、十分に魅力的なものではない。
紙とE-Bookを超えた環境の重要性
このプログラムでは、Koboの新規顧客を紹介した書店に5ドルを提供。この顧客が最初に購入する際には5ドル分のクレジットが利用可能になる。このほか、一定の目標水準を達成した書店には別に「報酬」が提供され、100人の新規アカウントを獲得した書店には、ベストセラー作家を招いたイベント開催、同50人の場合にはKoboデバイスを商品としたコンテストの開催が約束される。これまでデバイスの店頭販売はほとんど成果がなかったようだが、店頭展示は続けるようだ。
米国ABAに所属する独立系書店は、大型書店チェーンとは対照的に、近年その数を増やし、売上のシェアも伸ばしている。地域社会における機能が再評価されつつある。Kindleを使わない伝統的愛書家の支持が欲しいKoboとしては、書店を通じてアクセスし、eリーディング体験を深めてもらうことで販促効果を狙っているのだろう。しかし、E-Readerはどうするか。直接的には来店者がスマートフォンやタブレットを持っていることを想定しているのだろうが、Kindleを使わない愛書家で、スマートデバイスを保有し、読書に使うつもりがあるケースはどの程度期待されるだろうか。
米国でアマゾンとB&Nが、さらにドイツのTolinoが改めて証明したように(頑固なデジタル嫌いを除けば)、消費者は印刷本とE-Bookをケースバイケースで選択している。ということは、同じストアで情報を入手し、選択可能であることが必要だ。消費者にとって意味をなさないことでは書店にとっても、Koboにとっても意味をなさない。
Koboがアマゾンと張り合うためには、印刷本を含めて扱い、後者に関しては地域の提携書店での予約・購入・受取・宅配を可能とするような仮想ストアを持つ以外にないと思われる。ABAとの協力関係はより大規模に発展させなければ効果は微々たるものだろう。それは日本においても同じだ。◆ (鎌田、05/28/2015)