チーム・パブリッシングの可能性

Booktropelogo新しい自主出版プラットフォーム・サービスを目ざしている米国シアトルのBooktropeが、とりあえず120万ドル(目標230万ドル)の調達に成功した。その「チーム・パブリッシング」というコンセプトは、商業出版を(会社ではなく)インディーズ出版として実現する潜在ニーズにアプローチしている。

出版社なしの商業出版

Booktropeの共同創業者、キャサリン・シアーズ氏によれば、同社のアプローチは「チーム・パブリッシング」あるいは「ハイブリッド・パブリッシング」というコンセプトに集約される。基本的には、E-Bookと印刷本の編集・販促・流通に関するサービスを提供する。そして小規模なグループで売上をシェアするモデルを提供する。2013年のSeattle Angel Conference で第1位、GeekWire Startup Dayの最終選考にも選出され、20万ドルあまりのエンジェル資金を確保して具体化した。5月中にサービスの立上げに必要な資金を最終的に確保する予定だ。

チーム・パブリッシングは以下のようにまとめられている。

  • 通常の出版プロセスを、資金準備なしで実現する
  • 本の売上の70%はクリエイティブ・チームに配分され月々支払われる
  • 柔軟なチーム編成で必要なすべての業域をカバーする
  • Teamtropeプラットフォームがプロセスを支援する

Webサービス・プラットフォームであるTeamtropeは、統合的なチーム出版支援環境で、制作・出版・販売のワークフローを通して出版プロジェクト全体をカバーする。印刷本とE-Bookを同じ環境で管理することで、作業的な重複や手戻りを最小化し、高品質で迅速な出版を可能にするとしている。「印デジ統合環境」が現在の商業出版プラットフォームの標準的要求であることを考えると、Booktropeが目ざすことが、商業出版と同じ品質と生産性をインディーズ出版に対して(リーズナブルな価格で)提供することに置かれていることが理解できる。出版チームがプロフェッショナルによる強力な仮想出版社として機能すれば、企業としての管理費用を負担せずに売上と取り分を最大化できるだろう。その技術は「、立派な本をつくり、最大限の読者に評価してもらうという一つの目的に奉仕する」と同社は述べている。

実現すれば出版社に大きな影響を与える

golden_egg-280x150Booktropeに限らず、ベンチャー企業が提起するものは、第1に市場に潜在するニーズであり、第2にそのニーズに対する新しいアプローチ(ビジネスモデル)であり、第3に実用段階にあるテクノロジーの効果的応用である。この順序には意味がある。ちなみに日本では1と2をとばして3だけを評価するのでボタンの掛け違いが生じやすい。1の読みの甘さが2の杜撰さにつながり、3ではフォーカスのない仕様の羅列、使えないシステムとなる例は無数に見てきた。シリアル・アントレプレナーに共通するのは、市場の読みの確かさであり、だから技術的判断を誤らないのだ。

Booktropeがうまく旗揚げできるかどうかは分からないが、現段階ではニーズに対してコンセンサスがあることは確実だ。つまり、第2世代の自主出版の課題は、プロフェッショナルによる出版プロジェクトをチーム(グループ)で実現することにある。

  • 印デジ単一プロセス・同時出版
  • 企画・制作から販売までのワークフロー
  • チーム・パブリッシングのサポート

の3点ということになる。これらは大手出版社(たとえばハーパーコリンズやペンギン・ランダムハウス)が構築してきたものと同じで、自主出版の中で、商業的な性格の強い部分のニーズを開拓するものとなる。ビジネスとしての品質と規模、それらを可能とする制作、マーケティング、プロジェクト管理をビッグファイブ水準に近づければ、あとは出版社かチーム出版かという、ビジネスモデルの勝負になる。チーム出版は最も成長力が大きく、ビジネスモデルとしての拡張可能性を持った新領域であると思われる。

しかし、出版社が不要になるものでもない。同じプラットフォームを利用することができるし、プラットフォーム・サービスの技術的不完全性をつねに補う能力を持っているのは出版社だからだ。「自主出版2.0」プラットフォームの登場は、出版社とクリエイターの関係に影響することは確かだろう。 (鎌田、05/05/2015)

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