アマゾンはKindle Direct Publishing Select (KDP Select)プログラムの大幅な改定を発表した。KDP Selectに関する著者への支払は7月1日から、規定貸出回数ではなく、読了ページ数に基づいて支払われることになる。また5月分のグローバル基金をさらに780万ドル追加して総額1,080万ドルにした。7、8月も1,000万ドルペースで行くと見られる。
読了ページ数に基づく印税清算
アマゾンのE-Book貸出や定額制へのアプローチは、他社と異なる基金配分方式で、基金の積立額は毎月調整している。しかし、10%以上読んだら全部読んだとカウントして1冊分の版権料を支払うという方式は他社と同じだった。今回変更した理由は、長い本でも短い本でも同じカウント方法なのは合理的でない、という著者からの批判に応えたようだ。ヒュー・ハウィ氏もこの改善を要望してきた一人だが、「これほど長くかかるとは思わなかった」とブログで述べている。
これで長い作品が短いものと同様に扱われることがなくなったが、旧規約は短編を集める役割を果たしてきており、著者もそれに最適化してきたところがある。今回の是正で長編作家が報われることになり(全部読まれた場合)、読者の選択肢としてはプラスになる。Good eReaderのコズロウスキ編集長は、KDP Selectのためのアマゾンの基金が1,000万ドルとして、10億ページが読まれた場合の配分シミュレーションを例示している。
- 100ページの本がきっかり100回借出されて全ページ読まれると、この著者の取り分は1,000ドル
- 200ページの本がきっかり100回借出されて全ページが読まれると、この著者の取り分は2,000ドル
- 200ページの本がきっかり100回借出されて半分が読まれると、この著者の取り分は1,000ドル
この試算によると、KDP Selectの改訂プログラムで相対的に得をするのは、挿話的な話を連ねた連作小説で、近年アマゾンで増えているカテゴリだ。読みやすく、短いのが有利ということになる。読者のフィードバックを得ながら書きつなげていけるので、完読率が高くなる。読んだ分だけ払い戻すという方式は、10%超で全額という方式よりは合理的だ。大手出版社本も扱うScribdやOysterは、10%超方式を踏襲すると見られるが、採算的にはハードルは高い。
ちなみに、月間総額1,000万ドルの印税原資は、年間で1.2億ドル(約150億円)になる。もちろん、これは定額制会員やPrime会員などのアマゾン顧客の利用に対して用意したものだが、KDP Selectの著者へ毎年支払う額としてはかなりの額であると思われる。◆ (鎌田、06/23/2015)
- Announcement: KDP Select Global Fund Update & Program Changes, Amazon Press Release, 06/15/2015
- Amazon Changes Terms for KDP Select, Will Now Pay Authors Based on Pages Read, by Nate Hoffelder, Ink, Bits, & Pixels, 06/15/2015
- How Le Guin (Accidentally) Got It Right: Amazon is Manipulating the eBook Market, by Nate Hoffelder, Ink, Bits, & Pixels, 06/10/2015
- Amazon Changes the Structure of KDP Select, By Michael Kozlowski, Good eReader, 06/15/2015