米国の著作権制度が有効に機能していると考える人はほとんどいないが、改善の方向性と手段についてのコンセンサスにはまだ遠い。下院のジュディ・チュー(民主党、カリフォルニア)と共和党のトム・マリノ(共和党、ペンシルヴェニア州)の両議員が6月12日に提案した討議草案 Copyright Office for the Digital Economy Act (CODE Act)に、出版界の2団体はそれぞれ異なる反応を示した。
出版社 vs. 図書館
米国出版社協会(AAP)は草案を支持、「デジタル時代の著作権と創造性を最大限に発揮できるようにするツールと権限を著作権局に付与する立法のための第一歩」と述べたのに対して、米国図書館協会(ALA)は、「USCOの役割に影響を与える重要な技術的課題に関して、草案はほとんど対応していない」として、方向性に疑問を表明した。草案がUSCOを独立した機関に昇格することを支持したのに対して、図書館側は、USCOの情報能力が「悲惨なまでに不足しており、2015年3月に米国会計検査院(GAO)が報告書の中で詳細に勧告した、デジタル環境における著作権者と公衆のどちらのニーズにも対応できていない」としている。
ALAは、USCOが必要としているものは、権限よりむしろタイプライター時代から脱却するための資金と技術的能力であるとして、議会がデジタル変換への積極的投資を支持するよう求めている。GAOの勧告は31項目に及び、かなり具体的なものだが、草案には反映されていないという。CODE Actはコンテンツ関連業界のロビイストの支援を受けて作成されたものだが、ALAは参加していなかったようだ。草案はUSCOの権限強化を優先しているのに対し、ALAは利用者側の立場から、コンテンツへのアクセスを促進するための具体的措置(ITインフラの強化)を求めている。
単純化していえば、超党派の草案は議会図書館(LC)に所属している米国著作権局(USCO)を独立させることを優先するのに対し、LCの機能低下を怖れるALAは能力強化を優先させることを望む、という構図だろう。しかし、当事者はこれらだけではなく、解決を要する問題も多いので、論争はこれから活発化していくと思われる。◆ (鎌田、06/18/2015)