演出された「E-Bookのニッチ化」

AAP米国出版社協会(AAP)は7月16日、2015年第1四半期の統計を発表したが、商業出版の売上は前年同期比2.2%減の14億9,800万ドル。フォーマット別内訳で、E-Bookが7.5%、ハードカバーが6.7%と減少を見せたのに対してペーパーバックが8.6%増と回復したことが注目されている。電子対紙で見ると30.9%から29.2%へと1.7ポイントのダウン。

Good eReader (07/16)のマイケル・コズロウスキ氏は、印刷本と書店の復調を示す英、豪、独などの断片的な数字をつなげることで、一時はもの珍しさで売れたE-Bookは降下し、先は見えた、と言わんばかりのことを結論づけている。「E-Bookを経験したマスマーケットは、印刷のほうが手にしやすく、所有感も味わえると判断した」というのだが、これはどうも「炎上煽り」っぽい。さっそく1日で50本以上のコメントが寄せられ、ペーパーバックのみが伸びても、印刷本としては変わっていないことなどが指摘されている。

フォーマット別の販売

2015年1-3月 2014年1-3月 変化率
E-Book $374.1 $404.5 -7.5%
ハードカバー $463.0 $496.3 -6.7%
ペーパーバック $442.9 $407.7 +8.6%

本誌がいつも言っていることだが、AAP加盟の調査対象出版社は、米国の出版市場全体を代表するものではないし、80%はおろか75%を捕捉しているかどうかも怪しいのであって、AAPがスルーしているインディーズ市場がますます拡大していることはAuthor Earningsのレポートでも示されている通りだ。Kindleベストセラーのインディーズ比率は目立って高くなってきた。そしてアマゾン出版はAAPで捕捉されない。

AAPの数字から推定されることは、ベストセラーE-Bookの価格上昇(出版社による値上げ)が、計算どおり、あるいは当然にも、(彼らの)E-Bookの減少を招いたということ。それだけの話だ。紙より高いE-Bookを買う人が多くないことは、ヨーロッパでも日本でも知られている。E-Bookの一般書が価格に敏感な商品であり、4-10ドルの価格帯において売上を最大化することは実証されている。AAPの売上の85%あまりを占める大手出版社は、紙の売上の最大化を優先し、E-Bookを意図的に引き下げようとしたのだ。筆者はこれが、作家協会の要求に示される、E-Book印税への著者の不満を意識した措置であると考えている。

大手出版社は特定のタイプの著者を選別して取引をする傾向を強めている。そこから漏れた著者の大部分はインディーズを選ぶだろう。AAPの販売統計(紙+デジタル)は停滞し、E-Bookへのメディアの関心も薄れるのかもしれない。しかしこれは読者にも著者にもあまり関係のないことだ。 (鎌田、07/21/2015)

Scroll Up