米国オーディオ出版社協会(APA)は7月13日、外部の調査会社に依頼して行った年次調査の結果を発表し、2014年のA-Bookの市場規模が15億ドル近くに達したことを明らかにした。この数字は独立した市場として注目すべき規模ということになるが、売上の伸び率は13.5%と鈍化しており、急成長から安定成長に移行したことを窺わせている。
デジタル化で若者層へ浸透
2014年の発行点数は25,787点で、前年を1,000点あまり上回った。こうした成長は、ダウンロードの一般への普及とA-Bookフォーマットの利点への認知によるものとAPAは見ている。デジタルダウンロードは金額で7.3%、点数で10%の増加。年齢別では成年向けが87%と多数を占めているが、児童・青少年向けの需要も着実に増加しつつあり、最近の調査では回答者の36%が児童/YA向けコンテンツを利用している。分野では77.4%がフィクションでノン・フィクションは22.6%と少ない。
6月に発表されたエジソン研究所の調査によれば、オーディオブックの普及は米国人の41%に達しており、5,500万人が昨年1年間に一度ならず聴いたことになっている。回答者の70%は3点以上を聴いたことがあり、30%は5回以上という。モバイル・ダウンロードの増加とともに年齢層は若者に広がっており、利用者の3分の1が25-34歳。デジタル化率は73%で、利用頻度が高いほどデジタル比率は高くなる(82%)。米国では運転中に聴く人が多いが、61%は自宅でリラックスした時に聴いており、また4人に1人はラップトップを使用しているという意外な事実もある。分野では、スリラー/サスペンスがトップで、僅差で歴史、伝記が続き、以下、回想、人気小説の順になっている。
日本でも潜在市場は500億円
1世紀以上の歴史を持つ米国市場はあまり日本の参考にはならないかも知れないが、ダウンロード環境はほぼ違わないところにあるので、あとは耳で読む習慣の問題ということになるだろう。米国市場が15億ドル(デジタルが11億ドル)ということは、GDP比からみて日本でも300~400億円の市場はあっても不思議ではないことになる。5年から最大10年でこのレベルに到達することを考えればよい。そのためには、質(放送品質)と多様性(小説から教材まで)、可能性(文字・グラフィック・サウンドビデオとの融合)、話題性(有名人、作家等)などで地道に市場を育てていく努力が必要になる。価格や入手方法も多様でなければならない。
重要なことは、A-Book市場は出版社にとっては版権マーケティングのツールの一つであり、制作に直接タッチする必要がない一方。著者にとってもインディーズ出版の余地があるなど、オーディオブックは出版のフロンティアであるという点だ。アマゾンがまず定額制から始めたように、ビジネスモデルにおいて様々な可能性がある。うまくいけば、デジタル・マンガのように活字E-Bookよりも急速に発展する可能性が高い。◆ (鎌田、07/28/2015)