楽天が3月に買収した電子図書館サービスのリーディング・カンパニー OverDriveが、米国図書館協会(ALA)の年次総会で、新しいロードマップを発表した。先月に同社が行った利用者調査で浮かび上がった要望に応えるという形をとっており、同社がこれまでの成果の上に、さらにサービスの充実と拡張を目ざすことを表明したものだ。
図書館と利用者の多様なニーズにきめ細かく対応
利用者調査(詳細は8月初旬に発表)の結果では、利用者のニーズは、多い順にデバイスの互換性(74%)、使いやすさ(63%)、コンテンツの迅速な入手(52%)となっていた。OverDriveは、以下の方向を提示している。
1. 新規利用者の獲得:米国人の50%はいまだに図書館カードを保持していない。アクセス、見本表示、検索のスピードと使いやすさを高めることで、図書館のデジタル・カタログの中から希望のタイトルをすばやく見つけられるようにする。
2. 読者とのエンゲージメントの進化:新しいユーザーに対し、OverDriveは読書体験を高めるツールとデータ駆動サービスを提供し、アクティブなな利用者にしていく。
- 図書の推奨アルゴリズムの改善、検索エンジン、ページ遷移の高速化。知名度の高くない良書へのアクセスを容易にし、次に読むべき本をすぐに見つけられるようにする。
- ユーザーにとってのタイトルの入手性と図書館にとってのROIを最大化するために、OverDriveは複数のアクセスモデル(貸出当たりのコスト、同時利用など)をサポートしているが、さらに「ブッククラブ」も試験的に提供していく。
3. 図書館の利用コミュニティの拡大
青少年:図書館のWebサイトでのKids eReading Rooms ページの提供。YAコンテンツの充実と利用率の向上、選択支援、語り付のタイトル1600点の導入、EPUB3フォーマットによる音声・テキスト同期機能の提供。
- 非英語圏読者:様々な言語コミュニティに対して、母国語で読めるような環境とコンテンツを提供。すでに13ヵ国語での読書環境を提供するほか、52の言語で116,000点の非英語E-Bookおよびオーディオブック・タイトルを用意。
- ビジネス・コミュニティと定期刊行物読者:NOOK Mediaと提携し、1,000点以上の代表的な雑誌・新聞の電子版を提供。クリーヴランド図書館では利用者が急増。
- 図書館施設外の読者:空港などコミュニティ・センターや学校などへの図書館コンテンツへのアクセス提供を支援。
- 一時利用者:図書館のE-Bookの見本を読み、その場で借りることが出来る埋込機能 Readbox をWebサイトに提供する。バンクーバー市立図書館で大きな成果を上げている。
一読して驚くのは、地域によって環境の異なる図書館の戦略と、利用者の属性、利用形態などによって異なる、多様なユーザーのニーズに対してサービスを見事に整合させていることで、さすがに業界の最先端をリードするだけのことはある。◆ (鎌田、07/02/2015)