アンテナハウスがEPUB3/PDF制作サービス提供

antenna_logoアンテナハウス(株)は8月21日、クラウド・オーサリングツールCAS-UB V2をバージョン・アップするV3を9月17日から提供開始すると発表した。縦組 PDF のレイアウト機能を大幅に強化し、本格的な商業出版用途に使用可能な縦組 PDF 作成にも利用することが出来る。また、同社では制作サービスを拡張し、EPUBに加えて印刷用PDFの作成にも対応する。

縦組みPDF機能で商業印刷物対応

CAS-UB_logo技術系・業務系のEPUB/PDF出版物制作を主な用途としたCAS-UBは、V2までは横組にしか対応していなかったが、縦組レイアウトへのニーズもあり、このほどEPUB3の仕様に対応した。これにともなって、印刷用PDFの制作サービスを提供するが、印刷を前提としたPDFの制作には一定の業務経験が必要となるためである。CAS-UBは、著者・編集者がWebブラウザで使用することを想定しているが、CAS記法を使って編集する必要があり、ある程度の知識と自修を前提とする。使用頻度が低いユーザーが、ゼロからパラメータを指定し、期待する商業品質の出版物を自製するのは難しい。「本の制作室」サービスは、CAS-UBの能力をを一般に利用しやすくしたものといえる。

制作サービスは、顧客のWord やテキストの原稿を日本語組版して印刷用の PDF を納品する。要望があれば、印刷本と電子書籍 (EPUB3) を同時に作製・納品。紙とデジタルの制作を同時進行することにより、正確性(コンテンツの同期)および生産性(制作プロセスの同期)が実現される。編集・制作は、著者・編集者と制作担当技術者とが環境を共有しつつ行うことが理想だが、本サービスでは発注者にもCAS-UBのIDが提供されるので、制作担当者との間のコミュニケーションが緊密化されるほか、原稿などの変更をユーザー自身が行うことが出来る。

サービス料金は、250ページの本文組版PDF化とEPUB制作のセットで10万円(消費税別)を基本とし、個別に見積る。製作期間は、文字中心の縦組書籍の場合1~2日でPDF+EPUB化。期間中の修正作業などが伴う場合は、最長で1冊2ヵ月以内。同社では年間売上目標を1億円としている。

プロフェッショナル・サービスとの自由な組合せが市場をつくる

出版支援ツールとプロフェッショナル・サービスの組合せは米国で急速に拡大している。後者には、ブックデザイン、カバーデザインや印刷用PDF、あるいは印刷物の納品がオプションで付いてくる。インディーズ出版の拡大に対応したものだが、職業的にブックデザインを行っているわけではないユーザーが単独でツールを使いこなすのは面倒で、プロなら簡単な解決法を知っているからだ。多くはあまりに簡単で代金を請求できないものだ。一方で印刷版へのニーズは少部数であれ確実に存在するので、サービス側は同じツールを使ってユーザーを支援しながら、そのことよりは付加サービスで効率よく稼ぐ。

伝統的な商業印刷は、発注者と受注者の絶対的な断絶(非対称性)を前提としていた。制作における技術、作業工程、コスト等々に関する知識を共有しない発注者と受注者が、ともに満足のいく出版物を得ることは相当に難しい。とくに印刷物については、発注者として知るべき(だがほとんどの場合知らない)細かなルールがあるからだ。他方で、「コンテンツ」は原稿で完結しているわけではなく、形が見えてから修正、追加が行われることの方が多いし、ステークホルダーの多い出版物の場合には、下版前になって内容の吟味や承認を必要としたりすることも少なくない。ワープロ原稿を精読してくれる人は少ない。デジタル出版がいいのは、手戻りが生まれやすい工程の遊び(例えば組版や出力作業)が少ないことだが、逆に少なすぎるために、いきなりアウトプットまで行ってしまい、それがトラブルの原因になることが多い。

どんな出版物でも、「完璧」ということは難しいし、内容からレイアウト、デザインまで、手間をかければきりがない。時間とコスト、知識と技能によって品質が変わってくる。出版支援ツールとプロフェッショナル・サービスの組合せは、新しい制作ワークフローを出版やビジネスの現場に定着させていくだろう。それは、様々な出版のプロ(例えば校正者)が必要に応じてプロジェクトに参加しやすい環境とともに出来ていくと思われる。 (鎌田、08/25/2015)

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