Kindle Unlimited (KU)が著者への印税支払方式を変更して1ヵ月が過ぎ、不安のうちに最初のレポートが来た。作家のブログから彼らの反響を集めることで、新方式の影響を知ることが出来るだろう。まだその時期ではないが、作家の皮算用レポートによると、一部で推定された「ページ0.6セント」というのはそう悪い数字ではなさそうだ。
Kindle標準ページ(KENPC)は印刷本の2倍
「在来出版からの避難民」という作家のリン・メッシーナ氏は、「ふつうの」作家(経済的な意味で)と言ってよいだろう。3ドルの本が1冊読まれるごとに約1.4ドルという、KUの印税については最初から悪印象を持っていたというが、それでも9ドルのペーパーバック・オリジナル本の印税は54セント(6%)だったので3倍にもなる。
新方式については、まず心配したのがページのカウント方式で、Kindleの標準算定方式(KENPC)による算定が紙のページ数と比べてどうなるかということだった。印刷本で278ページだった彼女の作品はKENPCでは約2倍の535ページ。「ページ0.6セント」の公式によれば、丸ごと読まれた場合には3.12ドルで、なんと3ドルの販売価格でられるよりも多くなる。これは散文作家にとっては気分の良くなる数字だ。あくまで前述の公式が実現するとした場合だが。
しかし、これは読みやすいフィクションなどの場合で、ジャンルによっては不当にも思えるかもしれない。料理本はページ数が多くないし、丸ごと1冊読まれることも多くない。ジャンルごとに基準が違っているほうがフェアなのかもしれない。今後フィードバックが多くなれば、より合意的な算定方式がつくられると思われる。
2014年7月に60万点でスタートした米国のKUは、今年の6月にタイトル数が100万点を超えた。この時点でKindleの総タイトルが359万点なので、28%あまりがストリーミング・サービスでも提供されていることになる。著者の不満が多ければ増えるはずもなく、結果的に満足は得ているのだろう。開始1年で「読むだけ課金」に転換した結果が著者にとってどうなるかはまだ分からないが、とりあえずKENPCへの不安が解消されたことは大きい。◆ (鎌田、08/12/2015)