在来出版社のE-Book販売の減少が加速している。Good eReaderによれば、米国出版社協会(AAP)が発表する月次統計で、1-7月のE-Book販売が前年比9.3%減少。4月には前年同月比で51.6%と半減している。これは一時的要因やブームの終焉でもなく、AAPが代表する在来出版社がE-Book市場で存在を薄めていることを意味している。
価格の修正か衰弱か
今年1-4月の数字では、全体で前年比5.6%ダウンし30億ドル。一般書籍は2.1%減。成年向け書籍は3.5%アップしたが、青少年向けが15.1%、宗教書が9.2%と大幅にダウンしている。オーディオブックは33.3%増とまだ高成長が続いている。フォーマット別ではハードカバーが4%減(1-3月では6.7%減)、E-Bookが9.3%減(同7.5%減)。ペーパーバックは8.6%増(1-3月)で、ハードカバーに迫る勢いだ。昨年前半にはハードカバー、E-Book、ペーパーバックの順だったが、いまやE-Bookは落日のようだ。少なくともE-Bookの数字は、昨年末以来の「価格改訂」の結果であることは疑いないだろう。
かつてAAPの統計は米国の出版市場の80%以上を代表すると言われていた。自主出版市場が拡大するにつれ、とくにE-BookではAAP会員1200社の占める比率が実質的に低下していることが指摘されていたが、それが伝えるE-Book市場が「停滞」から「減少」に転じ、他の推計値との乖離が大きくなってくると、もはや疑問の余地はなくなった。E-Bookではなく、彼らが縮小しているのだ。あとはその減速がどの程度で、なぜその傾向が放置され、どこまで進むのかという問題になろう。
昨年末から今年初めにかけて大手5社とアマゾンとの契約交渉が決着し、出版側がE-Bookの小売価格決定権を手にしたことで、何が起きるかが注目された。今年前半の数字は、その結果を評価するに十分なものといえるだろう。注目された出版社の新しい値付けは、だがあまりにも率直・単純なもので、筆者も呆れるほどだった。競争環境下の価格は、合理性があり、安定し、しかし柔軟かつ機動的なものでなければならないはずだが、5社は新刊E-Bookを半年で5割も引上げ、「粛々と」紙よりも高い水準にしてしまったのだ。
別稿で述べた通り、これは時代錯誤の愚行というしかない。日本の出版社と同じようにしただけなのだが、米国には紙の書籍の再販制もないし、何よりもE-Book市場には競争相手もおり、出版契約に疑問を持つ著者も多い。戦略的失敗であることは明らかだが、あまりにも5社が足並みをそろえすぎているのが気になる。今年後半に価格修正に転換するかどうかが注目されるが、どうだろう。◆ (鎌田、08/12/2015)