アマゾンの50ドル・タブレット戦略

Fire15_1アップルiPadに続いてアマゾンがKindle Fireの新モデルを発表した。こちらのほうは、例年以上にガジェットとしての特徴が少ない。最新のベンダー・ランキングでも上位5社から落ちていたが、これで挽回は可能なのかと思われるだろう。しかし、他社とのビジネスモデルの違いを考慮しないわけにはいかない。アマゾンはメーカーではない。

メディア消費タブレット

アマゾンがこの1年最も力を入れたのは、100ドルのHD 6で、これは子供をターゲットにしたもので大いに成功したと見られるものの、7型以上を対象とするタブレット市場ではカウントされてない。しかし、コンテンツ市場の開拓には最低価格のデバイスこそ有効であるという確信は得ただろう。中途半端な価格で失敗したFire Phoneの教訓でもある。

アマゾンが今回発表した新製品の目玉は、50ドル(日本では約9千円、プライム加入で5千円)の7型タブレットだ。iPad Mini 4の、わずか8分の1。この価格は市場での最低水準で、ファーウェイやLGなどの中韓製品でも追従困難とみられる。3Dモバイル・ゲームReal Racing 3をドライブするハードウェアは、原価割れしているはずという指摘もある。その可能性はともかく、デバイスのが利益を出さない水準であることは確かだ。Fire OS 5 Bellini が50ドルのガジェットから「稼ぐ力」を引き出すことを確信していればこその価格だろう。100ドルならぬ50ドルのデバイスは、倍以上売れるというだけでなく、1台当たり50ドル以上のコンテンツ消費に導く可能性がある。

Amazon_mediaKindle Fireは、間もなく開始されるプライム・ビデやゲームを中心とした Underground という会員限定の無料サービス、無制限なクラウド・ストーレジを前提にしている。従来から不満が多かった拡張メモリの欠如という問題を、最大128GBのmicroSDのサポートで解消したことも、コンテンツ/ダウンロード中心のユーザー、Wi-Fiアクセスが十分ではないアジアのユーザーからは歓迎されるだろう。

もっぱらビデオや人気アプリを消費するためならば、400ドルのiPad Mini 4、129ドルのサムスンGalaxy Tab 3 Liteよりも魅力的に思えるユーザー層は多く、またアマゾンはそうした層をターゲットにしていると言える。Fireは画面解像度が貧弱でスピーカーもモノラル。明らかにAV性能を削ってCPU(クアッドコア1.3GHz)に注力した。欧米のゲームユーザー、インドや中国市場を強く意識している。安いデバイスで浮いた分をコンテンツで消費してほしい、というメッセージが明確だ。

プライムのマーケティング力は年々強化されている。定額のもとでのサービスの拡大は消費者の信頼を得ており、会費の値上げによってもまったく揺るがなかった。7型Fireはアマゾンでメディアを消費するためのデバイスとして人気を博し、それによってタブレットの売上ランキングに復帰するだろう。しかしそれ自体が意味を持つわけではなく、あくまでプライムとコンテンツの消費のための手段なのだ。 (鎌田、09/24/2015)

Scroll Up