E-Book市場で後退した大出版社(1)誤算

bananaAuthor Earningsが9月23日、注目の最新レポートを発表した。今年に入ってからの傾向を踏襲し、在来出版社のシェアの急激な低下が続いていることを示している。端的に、大手出版社の価格引上げに対する消費者の反応を示したものだ。出版社が年末商戦までに価格引き下げに踏み切るかどうかに注目が集まるだろう。

「在来出版社のシェア低下」を立証

レポート(以下AER09-15)の表題に “AAP Reports Own Shrinking Market Share, Media Mistakes It for Flat US Ebook Market.” (「AAPは縮小するそれ自身の市場シェアをレポートしたが、メディアはそれを米国のE-Book市場と取り違えた」とあるように、AAPやメディアの「E-Book市場は縮小している」認識に対して真っ向から反証を提出したものだ。今回はAAPの数字を相対化するために、AAPで統計化されている出版社の数字をシェア化したのが特徴。

AEを主宰する作家のヒュー・ハウィ氏は、AAPは在来の出版社1,200社、Nielsen PubTrackは大手30社のみを扱っているのに、ジャーナリストたちはすべてを代表するものとして扱ってきた、と批判している。数年前はそれでもそう外れてはいなかったが、アマゾンが自主出版の堰を切って落としたことで状況は一変している。現在、自主出版の洪水を最も正確に反映できているのはAERしかない。過去7四半期にわたって、AEはアマゾンの1日分の売上の45-60%を占めるランキング上位タイトルについて集計・分析を行ってきた。サンプル調査ではあるが、在来出版社のE-Book売上の67%を占め、同時にISBN非登録タイトルも扱っているKindleストアのデータであることに意味がある。

アマゾンがAAP統計の売上においてどの程度のシェアを占めているかについて、AEでは個々の出版社ごとに検証しており、7期分を通して見ることで正確性はかなり高いと主張している。アマゾンの売上に占める在来出版社の比率は、2014年で55%であるが、45%はAAPで記録されたもの、10%はAAPからは漏れたもの。残り45%はアマゾン出版と自主出版物である。AEはアマゾン以外で販売される33%のうち、B&Nを記録して同様な数字を得ている。

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在来出版社のシェアは危険水域に

pitfall2014-15年の変化で特に注目されるのは、AAPが追跡している市場のシェアがこの7期の間に46%から32%まで低下していることだ。出版社を通さず、ISBNも持たないタイトルのシェアが2015年1月の30%から9月には37%に増加しているのは、定点観測とはいえ、かなり有意な変化と言える。これがたんなる出版物の発行点数だけであれば、出版関係者は無視するだろう。書店の店頭にも並ばず、ISBNも持たない本などゴミ同然に考えてきたのだから。しかし、販売数量においてAAPよりも大きくなった自主出版市場を無視することは非現実的だ。それが最終的に重視される金額シェアにも反映しているとなれば尚更だ。非ISBN本は、カウントを始めた今年1-9月だけで12%から18%に上昇している。AAPのシェアは2014年2月の64%から50%あまりにまで低下している。アマゾン出版がすでにビッグ・ファイブと並ぶ存在であることも短期間の顕著な変化だ。

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AER09-15は、今年前半にAAPの統計で記録されたこと(E-Bookの下落)の背景を完全に説明している。AAP出版社の売上の大半を占めるビッグ・ファイブはE-Bookを大幅に値上げして顧客の「電書離れ、印書回帰」を演出して自己満足していたが、じっさいには自らの首を絞めていただけだったということだ。成長し続ける新しいフォーマット市場でシェアを10ポイント以上も落としたのである。 (鎌田、09/24/2015)

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