米国E-Book「市場絶滅」論争(1)

die or live米国におけるE-Bookの「没落」問題の議論がにわかに活発化してきたことは先週号でもお伝えした。米国出版社協会(AAP)加盟の1200社の1-5月のE-Book売上(予想値)が前年同期比10%減という大幅なものとなり、またアマゾンのライバルたちが一つづつ姿を消しているからだ。

大出版社がE-Book市場を潰滅する

間もなくNookも消えて事実上Koboだけになることが確実と見られる中で、Good eReaderのコズロウスキ氏が、「デジタル書籍市場は滅亡に向けて進み始めた。このフォーマットを絶滅から救えるものはない」とまで書いている。ならば彼のニュースも…と思ってしまうが、これは明らかに「クリック稼ぎ」「炎上狙い」の記事と思われ、すでに反論で埋め尽くされている。おそらく議論を盛り上げてどこかへ導く意図と思われる。

とはいえ、彼がオフレコの話として聞いたとことでは、大出版社の幹部は「E-Bookの価格をハードカバーより高くすることでE-Book市場が破壊され、その結果印刷本の利益率が高まることを期待している」という。これを話半分としても、本気でE-Bookの市場を潰してしまいたい、あるいはそれが可能だと信じている人間がニューヨークの出版界に存在するらしいことは認めなければならないようだ。しかし、どうにも筋が通らない話だ。

5つの疑問

第1に、彼らは委託販売制と値上げによって、事実上アマゾンの競争相手を抹殺した。コズロウスキ氏があえて(?)誤用する「略奪的価格」とは、本来アマゾンが非難されていたものだった。高価格で売上を減らし、アマゾンを助ける意図は何なのか。

第2に、E-Bookはすでに出版社の売上の4分の1を占めている。そしてこのフォーマットの利益率が高く、将来性があり、このデジタル転換を成功裏に行ったことを最近まで自賛していた。破壊するようなことを親会社や株主が認めるとは考えられない。

第3に、印刷本の売上が(デジタル離れによって)いくらか回復したとしても、最近の数字は「ハードカバー(新刊)の減少とペーパーバックの上昇を示しているだけで、印刷本が21世紀の出版をリードする存在であるわけではない。

第4に、「印刷本=書店」ではない。印刷本についても、オンライン書店が最大の販売者である現実は変わっていない。独立系書店の回復は、チェーン店の減少と相殺される。

第5に、E-Bookベストセラー・ランキングの低下は、消費者のマインドシェアの低下を通じて、新刊ハードカバーの売上不振につながる可能性がある。最近の数字はそのことを示している可能性がある。

出版社は排他的著作権で守られた「唯一の」商品を独占的に扱うことが出来る(という意味で)特別なビジネスである。だからこそ価格にこだわるわけだが、米英では印刷本の小売価格には介入できない。そこでE-Bookは物品ではなく「サービス」である、と当局が認定していることから、こちらをターゲットにして、紆余曲折の後にアマゾンにに小売価格決定権を認めさせた。これにより、値上げは出来たのだが、消費者にとってはもちろん、出版社にとっても魅力はかなりうすれてしまった。30%という手数料が固定なので、10ドルで3ドルというふうに流通コストが一定で数を売って利益率を高めるようなことが出来なくなった。

定価20ドルの本をで10ドルで卸して10万部を納品すれば、小売価格と無関係に100万ドル近くの売上になったのだが、委託販売では70万ドルにしかならない。つまり、出版社にとってのE-Bookの商品的価値は下がっている。商売はもっぱら印刷本で行うと決めたことになるだろう。退路を断って紙に賭けたのか、とも思う。しかし、話はそう簡単ではない。(→つづく (鎌田、09/30/2015)

 

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