スマートフォンとE-Bookの近くて遠い関係

store_platforms量的膨張と性能の向上に伴い、リーダとしてのスマートフォンが重要になってきている。しかし、それが「プラットフォーム」問題に影響することはほとんどないだろう。読書のプラットフォームはデバイスあるいはOSを超えたところにあるからだ。それはなぜiPhoneやiPadが期待に反してKindleの独走を許したかを説明している。

iBookは“ホーム”でもKindleに完敗

iPhone/iPadユーザーが、どの程度iBooksを使っているか、ということはかねて謎とされていて、それはこのアプリがiOS標準装備となってからも変わっていない。アップル自身は(アマゾン以上に)ごく外形的な数字以外を語らないので、限られたユーザー調査による外はないが、サンプルの価値はもとより、アプリの使用の有無、購入の有無、利用パターンなどまで知ることは困難だ。とはいえ、はっきりしていることは、iOSデバイスとiBookstoreとの関係は(AndroidとGoogle Play Booksの関係と同様)きわめて弱いということだ。

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英国のThe Bookseller’が2014年11月に Digital Censusという、1,000人の回答を得た調査結果を発表しているが、71%はKindleを常時使っており、iBookstore (13.4%)の5倍という結果を出していた。2013年には、法廷での証言でアップルのキース・モアラー氏が、2011年時点でおよそ20%のシェアを占めていたという推定を述べている。Publishing Technologyが2014年に行った調査では、iPhone保有者のiBook利用率は英国と米国でそれぞれ31%、41%とされていた。母数を考えればかなりの数だが、問題は内容だ。今年3月にティム・クックCEOは、iPhoneの累計販売を7億、iPadを2.25億としていた。合計で10億。稼働中のものは数億となるはずだが、市場での影は依然として薄い。

一方のアマゾンのほうはStatisticaの推定で、アカウントが2.7億人、E-Readerのシェアが73.7%。E-Bookのシェアも同程度とされている。そしてこの水準はiOSでも変わらないことが重要で、iOS→iBooks という関係がむしろ弱いことに注目する必要があるだろう。アマゾンは本をよく読むコア市場で強いが、この層は印刷本からE-Book、A-Book、古書、無料本まで幅広く読むので、専用E-Readerを中心にスマートフォン、タブレットを含めて複数の環境を必要とする。アマゾンのプラットフォームはそうしたニーズに対応したものだ。

E-Bookには「本」専用プラットフォームが必要

phone_readingiOS専用のiBooksプラットフォームを使うのは、アップルのファン以外は「たまには本(E-Book)でも」という消極的なユーザーが中心となるだろう。いずれにせよあまり積極的とも思えない。すると、Androidの数十億人というのと対して変わらないだろう。本はそれほど一般的ではないのだ。スマートフォン・リーダーは確実に増えている。出版社もストアもそのことを意識する必要がある。しかし、それはOS別アプリ(iBookstore、Google Play Books)が重要なチャネルになることと同じではなかった。簡単に言えば、E-Bookはゲームとは違い、OSとは遠く、紙に近いほどいいということなのだ。読書はイマーシヴでかつユビキタスな環境を必要とする。インターネットはそのための環境を提供している。

アップルやGoogleがE-Bookで成功するためには、何より「読書のための環境」が必要だ。それは難しいことなのだろうか。他社OS向けアプリが嫌なら、Webだけでもいい。それすら出来ないのなら、やはり自社OS上でもアマゾンの5分の1以下に甘んじるしかない。読むユーザーよりガジェットのほうが大事なら、読書よりガジェットを大事にするユーザーしか集まらないのだ。さらに言えば、ガジェット・メーカーは2年毎に新製品を買い替えるユーザーが好きだが、これはどうしても本をよく読む消費者とは結びつかない。

アマゾンは確かにストアとリーダを一貫させたぷプラットフォームによってE-Bookのビジネスモデルを成立させた。しかし、それが入口であり必要条件に過ぎないにもかかわらず、そしてすでに「読書環境」としての優劣が問われる時代になったにもかかわらず、いまだにそれをプラットフォームに従属させられると考えている人が多いことだ。アマゾンがそのことに集中しているのと対照的なだけに理解できない。アマゾン以上に開かれた環境をつくる以外に、アマゾンに対抗することは出来ない。 (鎌田、10/05/2015)

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