アマゾンは、Kindle Unlimited (KU)の印税の算定方法(基準単価)が10月分から改訂されることを関係者に通知していたが、その額がページ当たり 0.4809セントであることが明らかになった。8-9月の0.51セントと比べて0.03セント(約5.8%)下がったが、基準となる7月から比べると17.2%の下落となる。この数字から何が読めるだろうか。
急増する利用で10月は6%弱の低下
本誌の記事(11/03)で紹介したように、今回の改訂はKUの世界的拡大(問題となるのは価格体系が大きく異なるインド)に伴うものとされているが、6%弱の変動幅というのは、7-8月に比べれば、さほど大きなものではなかった。しかし、ページ0.5セントという、版権者が安心する水準を割り込んだことで、不安が増す可能性はあり、11月の基金の額が注目される。
KUの月額資金プールは、10月が1,240万ドルで、前月比40万ドル増と、7月以降の増加幅(20→30→20万ドル)の延長上にある。支払対象ページカウントを前月と比較してみると、約9.6%増加しており、それによってプールの増加分(3.3%)を軽くオーバーし、5%台の下げになったことが分かる。比較可能な7月と比べると、3ヵ月の間に30%あまりの利用増加があったことになる。年間100%を超えるペースで、これほど急速に伸びている出版市場はない。前月比10%増という10月の利用増加にインド市場が寄与していることは間違いないだろう。
問題は、単価が下げ止まらないことで、KENP (Kindle Edition Nomalized Pages)の価格が0.5セントを大きく下回るようなら波紋が大きくなるだろう。なおKENPはコンテンツ原文のページ数(表示によって異なる)とは無関係なもので、印刷本のページ数のほぼ倍となるとも言われている。したがって、通常の印刷本1ページに対して約1セント、300ページで3ドルと大ざっぱに仮定すると、KENPの数字は(販売の場合の版権料収入と比べて)悪いものではないと権利者に受け止められたので、この水準であれば、タイトルの供給も順調に拡大するはずだ。
1,240万ドルを単純に0.5セントで割ると、大ざっぱに25億ページ相当になる。ユーザー1人が月平均500ページを読むとしても、利用者は500万人という数だ(もちろん全員が月10ドルを払うUnlimitedの会員ではない)。500ページを印刷本1冊(250ページ相当)とすれば、月間500万冊を販売する書店に相当する。年間売上は5億冊を超えて増え続けている。この書店が月間に支払う版権料が10月に1,240万ドルであったということなので、1冊あたり2.5ドル。KU本の平均小売価格を5ドルと仮定すると、1冊分で2.5ドルは著者・出版者にとって十分に期待できる数字だろう。◆ (鎌田、11/19/2015)