オーディオブック2016年展望 (5):A-Bookのフロンティア

voiceA-Bookの市場展望の最後として、コズロウスキ氏の記事ではグローバル市場および周辺市場を取上げている。英語圏以外ではドイツが飛びぬけて成長規模が大きいが、ここではアマゾンの市場寡占が英語圏より進み、問題を生んでいる。周辺市場では、米国で圧倒的な普及をとげたポッドキャストとの結びつきに注目する。

ドイツが先行し、西語圏が追う

audible.de記事では英国についての言及がないが、高成長を経験している英国市場は米国と同じ状況にあると考えてよいだろう。コズロウスキ氏が取材したところでは、多くの人が2016年にスペイン語A-Bookがブレイクすると予想していた。スペイン語圏(スペイン+ラテンアメリカ地域)は、需要に対して供給が少なすぎる。同地域のA-Book出版は、2015年で300タイトルあまり。米国の大出版社はいずれもスペイン語圏市場に注力しているので、タイトル数も急増が見込める。

コズロウスキ氏の記事によると、ドイツでは400あまりの出版社から2万5,000点が刊行されており、毎年の新刊も700-800点。過去1年間に500万人近い、総人口の約7%がA-Bookを購入したという数字もあり、米国に次ぐ市場とされている。理由は不明ながら、E-Bookよりも成功していると言われている。おそらくは本好きな国民なので、印刷本への愛着と矛盾しないためと考えられる。しかしここでもアマゾン傘下のAudibleの寡占状態だ。これは書店業界の反発を買っており、書店団体は最近、「競争の制限」に当たるとしてECに是正措置を求めている。コズロウスキ氏は、2016年にTolinoのA-Book版が生まれる可能性があると指摘している。

ポッドキャストと新聞

the guardian audioさて、この異例の長さの記事は、最後に新しいA-Bookを紹介している。それは代表的新聞社が提供する、記事の朗読にコメンタリーを加えて編集したミニA-Bookだ。新聞A-Bookは、英国の The Guardianが代表的だが、すでに他社に広がっている。コズロウスキ氏は、各社とも主としてWebサイトで提供している点に疑問を呈し、むしろ視覚障碍者向けに記事朗読に専門化したフォーマットとプレイヤーとともに開発・提供すればビジネスチャンスになるはずだと指摘する。このアイデアはポッドキャストにつながっている。

同氏によれば、ポッドキャストは日本ではあまりメディアとして活用されてはいないのだが、米国では2014年に26億ダウンロード(DL)、2015年は40億DLを超えたと考えられている。Edison Researchの調査では、12歳以上の米国人の3分の1が、1回以上はポッドキャストに接しているとされる。ほとんどが商品ではないが、人々のライフスタイルに馴染み、成功したメディアであることは確かだ。ポッドキャストの優れた点は、聴取者の注意・関心を惹くということにある。「イマーシヴ」という点で活字本を凌ぐことがあるのは、とくに慣れ親しんだ声で話しかけられたと感じられた場合だろう。たしかにポッドキャストとA-Bookが融合すれば、フィクションの朗読以外に大きな市場が広がる可能性がある。

podcastしかし、ポッドキャストはこれだけのオーディオ・メディアに成長しているにもかかわらず、出版には十分に活用されていない。最大のポッドキャスト・ネットワークであるアップルiTunesは16カテゴリしかなく、出版が必要とする見つけやすさという点で大きな問題がある。それに何点の有効なタイトルがあるかも分かっていない(推定では18万点と見られている)。コズロウスキ氏は、「本探し」の支援にポッドキャストが効果的に使われている事例を紹介しているが、いずれもラジオ番組のような内容と完成度を持っており、たしかにこれを試聴するとメディアとしての声の力を実感できる。

この記事では日本市場や中国市場については触れられていない。これは本誌でカバーすべきことなので、とりあえず日本については、コズロウスキ氏の視点を参考にしながらレポートしてみたいと思う。 (鎌田、12/31/2015)

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