アマゾンKindleの最新読書環境

Fire_HD_8_Readers_Editionアマゾンは、最近のKindle Fireタブレットのファームウェアを順次更新すると発表した。特筆すべき機能として、タブレットでの読書体験を改善する Blue Shadeが提供される。眼精疲労につながるとされて問題になっているブルーライト問題にデバイスとして対応したのは初めてと思われる。またこれと合わせてFire HD 8にReader’s Editionを追加した。

青色問題に対応したBlue Shade

タブレットと専用E-Readerは、かねて対抗関係としてみられてきた。最大の争点となったのは、液晶(というより発光体のLED)が読書にいいか悪いかということだが、液晶の解像度がどんどん上がって消費電力も低くなり、他方でE-Inkの性能向上が停滞したので、タブレットやスマートフォンでの読書が広汎に普及し、タブレット vs. E-Readerという話題はめっきり減った。しかし、LEDと読書の問題が消えたわけではなく、最近ではそれが青色光に由来するとする説が有力になり、眼鏡などの対策用品も出ている。これを「トンデモ科学」とする意見もあるが、タブレットが何もしないで済むわけではなくなった。アマゾンのBlue Shadeは、タブレット読書に対応したものだ。

Blueshadeアマゾンのリリースによれば、Blue Shadeは、複数の特殊フィルターを使って青色光を抑制すると同時に暖色を調整し、また暗室での使用時に輝度を最低レベルまで自動的に下げるものだが、ユーザーが手動で好みに合わせて色温度と輝度の調整を行うことも出来る。青色光の波長はつねに抑制される。「最近の一連の研究によって、夜間タブレットの青色光に長時間晒されることで体内のメラトニン生成を抑える可能性があることが分かりました。それは熟睡に至る導入時間を長くし、REM睡眠を遅延させて翌朝の覚醒レベルを低下させる可能性があります。」とアマゾンは述べている。メラトニンは体内時間を調整する機能を持つが、とくに夜間に短波長の光を浴びると変調をきたし、夜勤労働者などを対象とした長期間の研究で健康上の問題が指摘されてきた。

F.luxGood eReader (12/07)のマイケル・コズロウスキ氏によれば、青色光問題に取り組んでいたのはアマゾンだけではなく、定額制サービスのOysterも、Luminと称した最後のプロジェクトで自動調整技術を開発し、F.luxというソフトウェアをデスクトップとモバイル環境に提供した。これはコンピュータではかなり知られたものである。DLは1,500万回を数え、アップルがこれを禁止するまではiOS最も人気のあるプログラムだったという。F.luxはコンピュータ・スクリーンの発色を室内光のようにするもので、夜間には室内光、朝には昼光のように調整する。画面はセピア調に近いものとなる。F.luxがアップルに嫌われたのは、ユーザー体験をコントロールするものだからだろう。Oysterの資産はGoogleが継承したので、Android版の開発も進められていると思われる。

アマゾンのBlue ShadeがF.luxと比較してどうであるかが次の話題になるが、技術的な詳細はまだ不明だ。おそらくはKindle Fireに最適化した層と汎用的な層に分けた2段階の調節方法をとると思われる。前者はファームウェアを拡張したものだが、iOSやAndroidではアプリから使用することになるからだ。とりあえずF.luxを使用した感想としては、日没とともにセピア調の画面となり、ほどなく眠気に襲われるということだ。身体に優しいとは眠くすることである、というのは自然なことだ。

feature-Compare._V288272440_SX750.0_アマゾンBlue Shadeが利用できるKindle Fire旧製品の範囲はまだ明らかにされておらず、AndroidやiOSのKindleアプリでも利用可能になるかどうかも不明だか、コズロウスキ氏は、デバイスを超えてKindleのUXを一貫させるというポリシーからして、対応する可能性は高いと見ている。Kindle/Fireの新製品→旧製品→アプリの順に、数週間から数ヵ月の時間差を置いて更新するというのが同社のスタイルだ。

HD8の Reader’s Editionは、専用皮革製カバーを付けたHD8に、Kindle Unlimitedの1年分(120ドル相当)をセットして価格を250ドルとしたもの。実質的には皮カバーの分だけの値引だが、ホリデーギフト用のパッケージとしては意味がある。Kindle Unlimitedには『ハリー・ポッター』シリーズなどが含まれているからだ。機能的にアマゾンが「読書向け」として強調しているのは、独自のBookerly Font、8段階の文字サイズ調節、使い分け可能な4色のハイライト、速読ファンのためのWord Runner、 Audible(30日お試し)、Whispersync for Voice、Immersion Reading、SNSメッセージング(Facebook Messenger、WhatsAppなど)との共用、 ソーシャルリーディングのためのGoodreads標準装備。

今年は Kindle Voyegerの2世代目が噂に上ったが、結局Kindle Fireの地味なラインナップばかりが目立つ結果となった。これはハードウェアにおける競争が一段落し、解像度より価格が重視される現実を示しているのだろう。 (鎌田、12/10/2015)

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