アマゾンにとって数少ない「大失敗」体験となったFire Phoneの後続プランについて、比較的信頼できそうな情報が流れてきた。同社が必要としているのは、タブレットがそうであるように、プラットフォームの一部として機能するスマートフォンであって事業ではない。しかし、両者を区別することは不可能と考えられてきた。どうやらそれが可能と判断したようだ。
スマートフォン・メーカーと改造Androidで提携の噂
Web報道メディア The Informationの記事は、アマゾンに近い情報筋の話として、同社がAndroidメーカーとの提携によって、そのサービス機能をアプリよりも深い、ハードウェア・レベルでスムーズに統合する可能性を検討していることを伝えた。これにはGoogleが標準で提供する一部機能をアマゾンのものと置き換えることが含まれているという。具体的には音声応答機能のGoogle NowをAlexaに取替えたり、Fireflyを組込むといったことだ。おそらくAndroidのライセンスが許す限度から外れる可能性があり、実質的にAndroidのFire Phone化を意味する可能性もある。情報はここまでのようで、これがどこまで具体的になっているかは不明だ。
しかし、数多い一部のAndroidメーカーは、価格競争が激化する中で、Googleを潤すことにしかならない正規Android製品販売よりも、アマゾンFF機能を搭載することでアフィリエイト収入を得ることに魅力を感じる可能性があるだろう。これはメーカーにとってのビジネスモデルの選択でもある。アマゾンからすれば、自社製品を持たずにユーザーを獲得するということで、技術的障害を克服する動機は十分にある。
モバイル・プラットフォームの「仮想化」は可能か?
スマートフォンを発明したのは、言うまでもなくアップルだが、同社はこの斬新なデバイスとともに、かなり古風な20世紀的ビジネスモデル(ハードウェアとOSをベースとしたエコシステム)とともに事業化した。それに対してGoogleは、デバイスの競争を促しつつクラウドサービスで稼ぐ21世紀的なモデルを採用したが、どちらもコアはモバイルOSであり、それがこの21世紀最初のキーデバイスを「覇権」の道具とする鍵を握っている。
強力かつ遍在するサービス・プラットフォームを最大の武器とするアマゾンにとって、iOSとAndroidの塀を超えてユーザーにアクセスすることは最大の挑戦の一つだった。そのために、Android改造プラットフォーム (Kindle Fire)をデバイスとして立上げ、タブレットではまずまずの成功を収めたのだが、「電話」を主要機能とせざるを得ないスマートフォンのマーケティングの難しさは、アマゾンの想定をも超えたものだった。Fireflyのような画期的機能をユーザーに使ってもらう以前に、あっけなく土俵を割ったことはまだ記憶に新しい。あまり早かったので、何が起きたかもよく見えなかったほどだ。
The Informationが報ずるところを信ずるならば、どうやらアマゾンは、独自のサービスを独自のハードウェア+OSとともに出すという、アップル型モデルを断念し、Googleモデルもスキップし、モバイルプラットフォームを「仮想化」するという独自の挑戦に目途をつけたようだ。◆ (鎌田、01/26/2016)
- Amazon’s Next Phone Play, By Amir Efrati, The Information, 01/25/2016
- Amazon’s smartphone plans: Deeper integration, Fire style phones?,
By Paul St John Mackintosh, TeleRead, 01/26/2016