US版「出版革命2016」予想(1)

revolution1/7号で、大手出版社の側から見たトム・チャーマーズ氏の「2016年10大予測」を紹介し、批判的にレビューした。分裂した世界の別の一方の当事者であるローリー・マクリーン氏が、別の予想を発表しているので、これも2回に分けて紹介しておきたい。ここでは「紙の復活」という見方が幻想であると語られている。

デジタルに逆風なし

laurie_mclean_2013 (1)「出版革命は絶対に終わっていない(誰が何と言おうと)」という勇ましい主張を掲げているのは、著者エージェントでサンフランシスコの出版界の名士であるローリー・マクリーン氏である。旧出版の世界を知りつつ、E-Bookの世界にコミットしてきたデジタル派は、2016年の予想を13項目にわたって歯切れよく語っている。これは最近の、Anne Allen's Blogに掲載されたもので、以下は要約。

1. E-Book販売は停滞していない
ビッグファイブは新たに獲得した価格モデルの結果生まれた数字の意味を曲解している。昨年は新人作家のデビュー作のE-Book版価格が紙を上回るようなことが起きた。たぶん誰でもハードカバーが安ければそちらを買う。在来出版社のE-Book販売が落ち込んだのは単純にそのためだ。しかし、アマゾンを計算に入れると話が違ってくる。E-Bookは順調だし、2016年もそれ以後も拡大していくだろう。在来出版社は書店を助けるために無理をしており、間もなく行き過ぎに気づいて調整してくるはずだ。

2. 印刷本の書店の減少は続く
アマゾンはすでに印刷本とE-Bookを合わせた市場の大部分を販売している。プライム会員の拡大はまだまだ続いているから、KDP Select と Kindle Unlimitedにはインディーズを支援する余裕がある。大手や独立系の書店では、とても付いていくことはできないだろう。

3. KDP Selectの著者収入で定額制のKUの比重が大きくなる
KU2アマゾンは顧客体験の調整能力が高いことで定評があり、UXは彼らの強迫観念ともなっている。そしてKDPでは著者も顧客として扱われている。当初、短いタイトルが不釣り合いなほど優遇されていたKUの版権支払方式は、昨年後半から改められ、ページ単位にしたことで堅実な著者の収入が増加した。これは今後も拡大する。

4. 図書館のE-Book貸出が増加する
図書館司書の仕事を持っている作家たちの話では、インディーズのE-Bookへのアクセスはブームともいえる状況になっており、大出版社のタイトルが高価なこともあり、図書館側も安いインディーズ本の扱いを増やしている。SmashwordsやOverdriveが提供しているアクセスはシステム的にまだ煩雑だが、これらはしだいに解消されていくだろう。

5. 中堅ライターは自主出版に追いやられる
indie4これは予想ではなく、この数年間続いている現実だが、知らない人は知っておいた方がよい。多めに見ても、作品の発売後半年で上位にランクされないと、次回作の前渡金は限りなく減らされ、フォーマットはE-Bookだけになり、あるいは契約がキャンセルされる。だから、ソーシャルメディアで著者としてのプラットフォームを築き、自主出版タイトルを用意しておかないと、ショックは大きくなる。

6. ビッグファイブの「ドル箱」志向は変わらない
伝統的出版ではベストセラーが聖杯として渇望されてきた。新人に賭けるのもベストセラーの可能性があらばこそで、売れる可能性がない著者は相手にしない。最近はもっぱら名の通った著者に集中する傾向が強まっている。巨額の前渡金が動き、マーケティング・コストが投入されるのもそこだ。これはハリウッドのやり方で、ニューヨークもそれに倣う。映画がそうであるように、インディーズ出版が空白を埋めることになる。

以上は簡単な予想で、水晶玉を見なくてもわかる。これだけでは面白くないので、次は2016年に起きる可能性があることを。外れるリスクはあるが、あっても不思議ではない、とマクリーン氏は述べる。次号に続く  (鎌田、01/21/2016)

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