インディーズA-Book制作サービス

listenupオーディオブックの動向について、一連の記事でレポートしてきたが、ここでは朗読と音源制作が最後のハードルになるという印象を強くした。市場の拡大はコンテンツの供給に依存し、コンテンツは技術とサービスに依存する。ではA-Book自主出版まで登場した米国で、その成熟はどの程度のレベルに達しているのだろうか。

平均制作費3,000ドルの秘密

Good eReader (1/26)に紹介されているListenUp Audiobooksは、3,000ドルという現実的な価格で一連の制作サービスをやってくれる。おそらくこのあたりがインディーズにA-Book出版を意識させるレベルなのだろう。通常の制作コストよりひと桁は少ないはずだ。複雑でリスクも少なくない工程を管理して商品にする全工程を3,000ドルで仕上げるノウハウと人材、設備のネットワークに自信を持つ同社は、サービスエリアを限定していない。中身は言語に依存しないので、グローバルに展開することもあるだろう。

ListenUp Audiobooksはジョージア州アトランタのスタートアップ企業で、もっぱらインディーズをターゲットに、A-Bookの制作・出版・販売をサービスとして提供しているが、比重は制作にある。これはちょうど、E-Bookの出版支援サービスの多くが、まず制作(編集、デザイン、組版、印刷)を基本としているのと同じで、上流工程ほど人間的要素が大きく、標準化していないからだ。そしてA-Bookはナレーターによってのみ実現される。設備は必要だが、クリエイティブな能力を持つナレーターがいないと何も始まらないという点がA-Bookのユニークなところだ。

ListenUp-035制作サービスは、したがってナレーターとスタジオという性格の異なる最低2つの要素を結びつけることが前提となる。前者は様々な個性や技能、経験を背景としたアーチスト、後者は細分化されたスキルを持つエンジニアで、著者/出版チーム(クライアント)の多くはあまりA-Bookの経験のない人々だ。この三者が一定の条件のもとに契約し、不確定要素をコントロールしながら最小限の打合せで作業を進め、一定以上の品質レベルを達成するというのは、誰が考えてもかなり難しい。通常、こういうサービスはリスクを大きく見込み、高い料金や煩瑣な契約条件を設定する形エディトリアル行われるから、とても作家や支援者のポケットマネーなどでは賄えず、したがってインディーズA-Bookは困難だった。この障害をどうやって越えたのだろうか。

ListenUpは100人以上のナレーターを登録しており、声質やスタイルなどをタイプ別に分類している。ポストプロのチームは、品質管理技術者、音響技術者、エディター、マスタリング技術者など50余りの専門職種から構成されるが、サービス料金は、作業時間×単価ではなく、最終制作物の再生時間で計算される。プロジェクトのタイプで異なるが最低が325ドル/時間で、平均的なコストは3,000ドル。これで済むなら魅力的な価格と言える。音源の制作が完了すると、ListenUp Audiobooksが、配信プラットフォーム(Audible、Findaway、OverDrive、Audiobooks.com)へのアップロードをやってくれる。

ListenUpの対抗はAudibleのACXをはじめ数多いが、それぞれ違う特徴や背景を持っている。1ダース以上はある活字の自主出版支援サービスよりは多様なものが生まれる可能性もある。 (鎌田、01/28/2016)

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