著者が出版社に「宣戦布告」

AG2-280x150米国の作家協会 (AG)は1月5日、米国出版社協会(AAP)に対し、これまでになく強い調子で出版契約の改革を呼び掛ける公開状を送ったことを明らかにした(原文PDF)。アジアを除く世界の主要著作者団体が署名者として名を連ねており、国際的な統一行動を意図している。「出版社対アマゾン」が終わった2016年は、著者と出版社の歴史的対決の年となりそうだ。

出版契約の公正を求める世界の著作者団体

Authors-Guild-AAP-letter-excerpt署名しているのは、英国、カナダ、アイルランドをはじめ、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、北アメリカの26団体にも上る。これらのうち、英国のSociety of Authors (SoA)とAuthors Licensing and Collecting Society (ALCS) は、同国の出版社団体 (IPA, IPG)に対して同内容の書簡を送っている。英国SoAのイニシアティブは、著作者から見た「公正」契約の要件を定義する7項目のキーワードの頭文字をとってC.R.E.A.T.O.R. (clearer, renumeration, exploitation, accounting, term. ownership, reasonableness)と称している。

「出版契約における不公正な条項は、著者の収入に影響するだけでなく、著述活動を行う能力にも影響を及ぼします。このことは、作家協会が2015年5月から着手している公正契約イニシアティブ(FCI)を通じて、繰り返し立証されてきました。いま、この結論をもとに行動する時が来たと考えます。」

「私たちは、これから数ヵ月の間に行われる大小さまざまな出版社との交渉の場において、ここに添付した条項の内容が議論され、ビジネスが作品を創造した関係者にとって公正で実り多いものであることを保証すべく、出版社の方々に善処いただけることを要望するものです。」

「私たちの要求は簡単明瞭です。出版社には現行の標準的契約条項の多くについて、より理に適ったものとなるよう、改めていただく必要があります。E-Bookの版権料は、著作者が売上の(わずか25%ではなく)50%を受け取れるようにすべきです。彼らは、新しい本にすぐとり掛かることを不可能にするような競業避止義務(NCC)や付帯条項で束縛されるべきではありません。また、出版社が1セントでも卸売価格を引下げた場合に、版権料を50%引下げることも受け容れさせるものであっではなりません。出版社が書籍へのサポートを停止した場合には、権利の返還を可能にしなくてはなりません。」

歴史的戦いを率いるレイセンバーガーAG事務局長

Society-of-Authors-PA-letter-excerptつまり、AGの要求は4項目で、英国SoAとともに当面はこの4条件を軸に交渉が行われることになる。それらは大出版社が取り合ってこなかったもので、交渉は難航必至と見られる。出版社の対応は「各個撃破」を基本としたものとなろう。長期的には、AGは世論の支持を得ることが出来るし、それによって司法・立法を味方につけることが出来る。問題は、時間がかかりすぎると、出版社を見限る著者も増えていくということだ。だから大手と中小出版社の利害の衝突も起きるかもしれない。いずれにせよ、これはデジタル時代の著作権をめぐる歴史的な問題だ。

AG_Rasenberger米国AGは、版権法の専門家で、議会図書館や連邦著作権局の顧問などを務めたメアリー・レイセンバーガー氏が事務局長に就任した一昨年末以来、組織の存亡をかけて「公正契約」を推進するイニシアティブに着手していた。公開書簡は、出版社への挑戦状であり、これまで行われてきた「意見表明」とは性格を異にする。つまり「二の矢・三の矢」が準備され、メディアの利用から、司法・立法の活用、アマゾンとの提携までを含む戦術が用意されている可能性が強い。それは間違いなく、国際的な著作権法のあり方や著者と出版社の力関係にも影響を与えるだろう。

それまでのAGは、「出版社対アマゾン」との対決でつねに出版社の側に立っていたように、契約問題で出版社を責めたてる(いや具体的要求を強く主張する)ことはしなかった。もしかしたら、出版社の「常識」を信じていたのかも知れないし、「対アマゾン戦争」での協力への見返りを期待していたのかも知れない。しかし、AGの淡い期待は幻に終わった。作家や書店を前面に立ててアマゾンとの交渉を行った大手出版社は、著者たちにとって硬直的で強欲な姿勢を変えようとしなかった。AGが最後の切り札としたレイセンバーガー事務局長は、大手出版社が擁する法律家たちとの勝負に臨むことになる。 (鎌田、01/12/2016)

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