「ベストな書店」を目ざすKobo

Kobo_Logo-280x150カナダの主要日刊紙Globe and Mail (2/19)は、Koboのマイケル・タンブリンCEOを取上げてかなり長文の記事にした。地味だが着実に本の読者のための仕事を続ける生き方は、間違いなく読書人の共感を得るものだ。それこそがNookとKoboの違いだろう。課題は、やはりエコシステムの独自性と展開力にある。それがなければ米国で成功しない。

学生時代に書店ビジネスに入ったタンブリンCEO

Koboは全世界に2,600万人のユーザーを擁し、470万点の書籍・雑誌を190ヵ国に配信している。事業は好調で、1月は過去最高の売上を記録した。E-Bookはカナダの出版売上の18%を占めていると推定される。Koboの熱心なユーザーは、毎月1冊のE-Bookと年間16冊の印刷本を購入している。世界市場の正確な推定は難しいが、アマゾン、アップルに次ぐ3位を占めていると考えている。以上がタンブリンCEOによる公式説明。

MTambrynG&Mの記事 (by Shane Dingman)は、親会社の楽天が最近の決算でKoboについて9,500万ドルの「のれん代」減損処理を行ったことを見逃していない(これは業績目標を達成できなかったことによる)。しかし、かつてはカナダを代表するハイテク企業だったKoboが、楽天という複合企業の傘下に入り、限られたリソースでメディアの巨人たちに次ぐ3位の座を守っていることに共感をもって書いている。なんといってもカナダではアマゾンと競う存在で、UXの改善に努力を怠らず、ユーザーに支持されている。これがNookとの最大の違いだ。「書店としてベストでありたい」というタンブリンCEOの姿勢は妥当なものだ。

この記事ではタンブリン氏の経歴が紹介されているが、オンタリオ州ロックウッドの音楽を愛する家庭で育ち、大学で音楽を学ぶ傍ら、地元の書店で働き、1996年にカナダ最初のオンライン書店(Bookshelf.ca.)の設立に参加した。このスタートアップは、カナダ最大の書店チェーンであるIndigoに買収され(1998)、彼もしばらくIndigoで働いた。2000年に同社を離れ、ITスタートアップを経て、2003年に出版データサービス企業 BookNet CanadaにCEOとして迎えられた。2009年に Indigoの社内プロジェクトとして生まれたKoboをマイケル・サービニス氏とともに立ち上げ、とくに海外市場の開拓に取組んだ。複雑な提携交渉で相手がほんとうに必要としていることを短時間で理解し、商談をまとめてしまう能力に、かつての同僚は驚嘆している。

唯一の創業メンバー。課題山積でも衰えぬ情熱

Koboは、出版社や書店から憎まれるアマゾンに対して、好感の持てるパートナーとして業界に受け容れられた。TV番組まで製作し、消費者のライフ・スタイルを広汎にカバーするプライム・プラットフォームを提供するアマゾンとはビジネスモデルがまったく異なり、読者に依拠するしかないので、出来ることは限られている。市場がブームを迎え、コストが急増した2011年に、Indigoは3億1,500万ドルで売却を決断し、楽天Koboが誕生した。サービニスCEOや多くの幹部が去った中で、タンブリン氏は、これが区切りとは考えなかった。Koboに留まり、現在はCEOとしてチームのすべてを率いている。2012年当時とくらべてスタッフは減ったが、オペレーションのレベルは落とさず、前進を続けている。楽天がAquafadas やOverDrive を買収したことも、長期的にはプラス要因だ。

MT+New+Head+Shot+_midG&M紙の記事は、現在のKoboが直面する課題を、(1)高い顧客の年齢層(50歳代)、(2)資金不足、(3)若く有能な人材の不足、として要約する一方、すでに売上の15%を占めるまでになった自主出版支援事業(Kobo Writing Life)の成長などに希望を見ている。しかし、同じカナダのWattpadのソーシャル・プラットフォームは強力で、なんらかのシナジーを探さなければならない。The Future of Publishingブログのサド・マキルロイ氏は、米国市場で成功していないこと、そして海外市場ではアップルが当初の粗雑なマーケティング姿勢を改めてきたことを懸念として指摘している。客観的に見れば、確かにそうだろう。しかし、タンブリンCEOはこのビジネスを心から愛し、スタッフを信頼している。

記事は「私は、テクノロジーをフルに使い、とても人間的で文化的な問題を解決するためにデザインし実現する、このビジネスが好きです。その領域と規模の壮大さが、私をこの仕事に没頭させるのです」というコメントは、彼の中の作曲家のもののようだ、という言葉で締め括られている。 (鎌田、02/23/2016)

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