E-Book価格戦争小史(2):時期区分

fix_price8年余りの間に、米国のE-Book価格システムは目まぐるしく変わった。それは多くの「ビジネスモデル」に実験の場を提供してきた米国での「市場=社会実験」の中でも、最大のものであったと思われる。しかし、この経験から得られた情報を生かせているのはアマゾン以外には多くなく、メディアの混乱はなお深い。

2008-2010 第1期アマゾン支配

米国ではアマゾンが$9.99ドルの小売価格を上限としてKindleの(2007E)立上げを成功させて以来、爆発的成長が続き、急速にデジタル・シェアを高めていった。この時点で出版社はこの新しいメディアの潜在力と可能性、既存ビジネスにとっての危険性を認識した。戦略的な「敵」は、すでに印刷本の小売価格を支配しているアマゾンであり、新市場も制したことでそれは現実的な脅威となった。アマゾンに匹敵するパートナーが求められた。

2010-2012 B5=価格支配

グローバル大手5社は、アップルのPadの立上げ(2010)を期して委託販売制への移行を図り、これにより、市場には委託販売(B5)と卸販売(その他出版社)そして価格制限付委託販売(KDP)という3つの形態が併存することになった。ここで最大手と自主出版が同じく委託販売制(手数料30%)をとっていることに注意したい(但し、大手の場合は版元の言い値、KDPの場合はアマゾンの推奨価格ゾーンである)。B5は価格を引上げたが、それによってシェアには影響を受けず、高い利益率を享受した。ただし、この時期にKDPがしだいに拡大していった。

2012-2014 第2期アマゾン支配

独禁当局の介入によって談合による委託制移行は違法・無効とされ(2012)、B5は2年あまりの間、卸販売に逆戻りした。B5にとっては暗黒時代と思われたが、アマゾンが自社のマージンを削って販促に協力したお蔭で、シェアは安泰、売上は上昇、利益率は著者から見て法外と思われるほどになった。そしてKDPが初めて市場で存在が意識されるようになり、AERの市場観測が始まったが、既存の市場統計では半分も捕捉されていなかった。

2015-    B5=価格支配の復活

2014-15年の新規契約で「晴れて」委託販売制に復帰し、版元が小売価格を支配することになった。この時に一律に値上げを行ったことで市場のシェアが大幅に変動した(B5↓、アマゾン↑、インディーズ↑)。いまB5は前の時代のほうが良かったと感じ、「あの日にかえりたい」とさえ思っているのだそうだ。価格を下げることは出来るが、アマゾンのマージンは30%で変わらない。価格の自由と引換えに、アマゾンに30%を約束してしまったからだ。アマゾンはそのマージンを印刷本の割引に使い、さらにシェアを上げている。書店を助けるはずが、逆に苦しめる結果になったのだ。消費者印刷本への回帰と思われたことでさえ、アマゾンの勝利に結びつくと予想しなかったのは愚かというしかない。 (鎌田、03/15/2016)

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