2015年「紙への回帰」の悲惨な結末

aap-logo-280x150米国出版協会(AAP)は、昨年11月の出版統計Statshot を発表し、同月までの合計で前年同期比の売上が1.2%の微増だったのに対して、E-Bookが12.7%と大幅な下落を記録したことが明らかになった。本誌が指摘しているように、表面的には「穏当」な数字の中で、在来出版社は深刻な問題を蓄積させており、出口も見えていない。

AAP昨年11ヵ月間の数字はデジタルでの敗北を示す

AAPStatsは、会員企業の中の1,200社以上の協力を得て、出版社の国内販売額(書店への卸販売、直販、オンライン販売)を合計したもので、発表までに時間がかかるが、正確な数字を発表してきた。商業出版社の昨年11ヵ月間の累計は、総売上が66億ドル。前年比で1.2%(約1億ドル)の増加。しかし、教科書や学術・専門書などを含めた同期の出版社全体では2.6%減の139億ドルで、よいものではない。

商業出版物では、ダウンロード・オーディオブック(A-Book)と印刷本が、各40.3%と16.1%の上昇。全カテゴリーを通じても37.1%と13.7%だった。印刷本の上昇は、E-Bookの価格高騰(印刷本を上回るものも多い)を反映したものである。E-Bookの減少は昨年を通した現象だが、12.7%減でほぼ印刷本の上昇に対応している。ただし、成年向け書籍の減少は7.3%に留まっている。A-Bookの成長は、紙と違って自然なものであり、成長余地はなお大きいと見られる。

教材系では、初中等教育系 (PreK-12)が4.4%、高等教育系が7.7%減とかなり目立った落ち込み。経済の低迷もあるが、教材支出の削減やデジタル(オープンソース)への転換の影響が注目されるところだ。それを検討するには別のデータが必要となる。経営・医学・法律・科学技術を含む学術・専門書は、全体で4.7%減。大学出版局も1.8%減とこれも冴えない数字。

商業出版に関しては、印刷本への回帰を喜んでいられる数字ではない。理由は以下の通り。

  • mistake割引率を高くしたアマゾンがシェアを高めている。
  • 「ぬり絵本」ブームの影響がかなりある。
  • 利益率の高いデジタルから低い紙への逆流で、経営的に悪化している。
  • デジタル市場での存在感を低下させ、著者の自主出版志向を高めた。

いずれも出版社にとって継続していけることではない。E-Bookで市場の7割を占めるアマゾンの売上の中で、商業出版社のシェアは5割程度にまで低下していることがAEの調査で明らかになっており、客観的にみて「危険レベル」に近づいている。すでに大手出版社の決算では利益率低下が問題になっており、経済合理性を無視した紙への回帰が、アマゾンのシェア増大、自主出版の拡大を招く自滅的政策であったことはもはや覆いようもない。NYタイムズなどの旧メディアはいつまで口を閉ざしているのだろうか。 (鎌田、03/23/2016)

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