アマゾンのソーシャルリーディング・サイト Goodreadsは5月17日、新たに日替り販促プログラム Goodreads Dealを開始した。同様のサービスではBookBubなどが知られているが、アマゾンはGRを使って対抗する。このビジネスの有効性を承認したことを意味するが、それによってGRの性格も大きく変わる。
新しい販売チャネル
Goodreads Deal (GR-D)は、個々の会員向にパーソナライズされた割引サービスを提供するプログラムで、会員のプロファイルに応じて、希望するタイプの値引タイトルの情報を毎日提供する。GRは出版社や著者と交渉して会員向けに大幅値引で提供可能な既刊本のリストを集め、会員の書棚に掲載してメールで告知する。BookBubなどと同じく、これは有償サービスで、出版社/著者は手数料を支払う。有償なので、効果がなければ続かない。料金は、それを収益にするというよりは、アマゾンのコンテンツ販売へのコミットメントと考えるべきだろう。
GRの創業者オーティス・チャンドラー氏によれば、「こうしたセールについて会員の関心内容について聞くのは初めてのことで、会員がリストを更新する理由にもなると思う。登録したタイトルが値引されれば、会員は機会を逃さず利用できる。」という。会員は、'Want to Read' の棚で読みたい本の書名を指定するが、会員がGRでフォローしている著者によるものが対象となったり、会員がGRの分野プログラムに登録している場合にDealを利用できる。
GR-Dは、とりあえず4つのジャンル(ベストセラー、ミステリ&スリラー、F&SF、ロマンス)を対象としている。これは、(1)需要が安定し、消費者が多種多様、(2)価格情報による刺激が有効、(3)アルゴリズムを検証・改善するのに最適、といった理由であると思われる。「特売」に反応するかどうかは消費者の性格によるが、それはメディアのつくる「話題」に反応する消費者と同じく、ビジネスの重要なターゲットで、デジタル・マーケティングの主要資源であるデータを豊富に提供してくれる。
マーケティングの両輪:プッシュとプル
アマゾンが2013年4月にGoodreadsを買収したのはそのためなのだが、会員が5,000万人を超えた(買収時の3倍)段階で、初めて本格的にマネタイズに乗り出したのである。Giveaway (プッシュ)とDeal (プル)は、そのための両輪であり、事実上最強のマーケティング・ツールと言えるだろう。アマゾンがGRをKindleのエコシステムと一体化することに3年をかけたことに注意する必要がある。そしてGRの会員はいまだに5つのストア(Amazon、Nook、Apple、Kobo、Google Play)から選択でき、GR-Dでもそれは変わらない。エコシステムは閉鎖的なものでは長期的に持続しないことを、ベゾス氏はよく知っている。
他方、同じ「日替りプラットフォーム」でニューズレターを発行するThe Fussy Librarianはアマゾンのアフィリエイトとしての資格を失ったことが伝えられている。BookBubとeReaderIQには変化が見られないので、それが特殊事例(規約違反)なのか、それとも「日替りプラットフォーム」を本気で集約するつもりなのかはまだ分からない。◆ (鎌田、05/18/2016)
参考記事
- Goodreads Offering Personalized Daily E-book Discounts,
By Calvin Reid, Publishers Weekly, 05/17/2016 - Move Over BookBub, Fussy Librarian – Goodreads is Getting Into eBook Discounts, By Nate Hoffelder, The Digital Reader, 05/17/2016
- Is Amazon Purging eBook Promotion Newsletters?, By Nate Hoffelder, The Digital Reader, 05/10/2016