米国E-Book市場の真実は霧の中

BEA2016先週米国シカゴで開催されていたBookExpo America (BEA2016)のパネルで、ニールセン社のケントン・ムーニー氏は、同社のBookscan の数字として、2015年の米国E-Book市場が、2014年比で13%減少したことを明らかにした(部数ベース)。出版社協会(AAP)の数字とほぼ一致している。したがってデジタルと紙の現状は依然として霧の中だ。

「降下するE-Book販売」はほんとうか

Nielsen_logo-280x1502014年のE-Bookの販売部数は2億400万部で、14.7%減。ピークだった2013年の2億4,200万部と比べると18%減で、下げ幅が拡大している。印刷本は2.8%増の6億5,300万部だったので、E-Bookの数量シェアは24%となり、前年の27%から漸減した。ただし、この増加はほとんど大人向け塗り絵本のブームによるとされる。Bookscanは、約400社あまりの在来出版社の自己申告に基づく数字を集めたPubtrack Digitalを使用している。AAPは会員約1,200社なので範囲はさらに狭い。

The Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏によれば、この統計は米国E-Book市場の半分しかカバーせず、自主出版はもとより、中小出版社の多くが漏れてしまっている。問題は、レポートにそうした捕捉率について明記されておらず、E-Bookが増えているのか、減っているのかについての議論を混乱させていることだ。そのためにデジタルについての共通認識が生まれず、市場の亀裂を深めている。メディアはそうしたことを伝えないので、それぞれが属するコミュニティの共同幻想の世界の「常識」を維持することになる。

ムーニー氏の説明の中で目新しいことは、E-Bookにおけるビッグ・ファイブ(B5)のシェア(部数ベース)が2014年の38%から、昨年には34%にまで落ち込んだことだ。2012年は46%だったので、12ポイントもシェアを落としたことになる。同氏によれば、自主出版と小出版社がシェアを増やしたためというが、自主出版のシェアはまだ12%(2014年は8%)にすぎない。小出版社は26%から30%に増加した。ニールセンによる自主出版市場の推定は、6,000人の消費者を対象としたサンプル調査に基づいているという。いずれも部数のみで金額によるシェアは開示されていない。部数で34%のシェアは、金額では60%台になる可能性が強い。AERは今年1月のKindleストアの観測データをもとに、B5のシェアを40%、自主出版系は27%としている。

出版の混迷は深まる

missing_poieceB5が「戦略的値上げ」によってかなりのシェアを失ったことは確かだ。それは覚悟の上で、自主出版はカウントせず、ただE-Bookのシェアを押し下げるということを目標にしていたのならば、それは成功と言えるかもしれない。しかし、それによって印刷本の復活と書店の活性化まで意図していたのなら、それは達成できていない。印刷本の復活は(塗り絵を別として)なく、出版市場は縮小した。

問題はやはり、ニールセンが把握していない市場、米国E-Book市場の70%以上を占める市場で何が起きているかということだろう。それをやっているのはAuthor Earningsだけだが、ニールセンやBowkerとはいまだに交流がない。Digital Book Worldでの「データガイ」登場は前向きなきっかけにはならなかったようだ。アマゾン・ランキングからの部数・金額推定は一定以上の精度を持ってコンテンツ市場の合理的な推定を行う唯一の方法で、これを無視しては、分裂した世界を統合できず、悲劇を招くだろう。

3月のDBW2016に続くBEA2016が、出版界の分裂と混迷の原因である「真実の欠如」の問題に動かなかったのは残念だった。長引くほど問題は深刻になり、デジタルのアマゾン独占の可能性が出てくる。 (鎌田、05/16/2016)

参考記事

Scroll Up