Author EarningsのQ2レポートは情報満載

3d_graphAuthor Earnings (AE)は、今年2回目となる四半期レポート(AER-0216)を発表した。今回は、価格と売上の関係を多角的に分析しているのが特徴だが、とくに著者のタイプによって価格がどのように売上げ(著者実収)に反映されるかを解明しようとしている。これはデータ・ガイがDBW2016で述べた仮説を敷衍するものだ

対象を拡大、分析も徹底してボリューム・アップ

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データは5月5日に記録されたもので、対象書籍を100万点、Kindle販売額の82%にまで広げた。これは販売点数が月1点に満たないタイトルを除くほとんどということになる。また印刷本は90万点、オーディオブックは6万7,000点を収録し、出版の「3大フォーマット」をカバーした。AERによれば、これは米国における在来出版社の刊行物売上の50%以上、非在来出版物の85%に対応するという。「世界最大の書店」における、「あらゆる種類の著者、刊行物の販売、実収の動向を捉えた完全な姿」であるとAERは宣言している。メディアにもデビューしたデータ・ガイの自信作と見てよいだろう。

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2014年2月から16年5月まで、四半期ベースの相対比較では、在来出版社のシェアは、販売部数で39%から23%へと16ポイントにダウン。インディーズは27%から44%へと17ポイントもアップした。販売金額ではなお40%対25%と逆転は許していないが、著者にとって問題となる実収印税金額ベースでは22%対47%と、すでに著者のビジネスモデルとしての自主出版の優位は確立されている。しかし、著者にとってのモデルの選択は必ずしも単純ではない。AERは、著者の市場への登場時期と収入によってセグメント化して考察している。

  • 著者デビュー時期:20世紀、10年以内、5年以内、3年以内
  • 収入金額:年間1万ドル、2.5万ドル、5万ドル、10万ドル、100万ドル以上

ベテラン作家以外、在来出版では低収入

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前世紀中にデビューした著者は、どの収入レンジでも在来出版が自主出版を押さえ、収入が多いほどその傾向は強いが、その他ではすべてにわたって自主出版がリードしている。AER-0216の発見は、ベスト・セラーリストに載らずに高収入を得ている著者たちのプロファイルにも及ぶ。10万ドル以上を稼いだ43人のうち30人はインディーズで、142人が5万ドル以上を稼いでいる(105人がインディーズ)。ほとんどはフィクションで、とくにロマンスが多いが、在来出版で受賞歴のある文芸作家も含まれる。

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AER-0216には、いつもの定点観測(出版タイプ別の出版点数、売上、著者実収に関する推定データに加え、著者の戦略的・戦術的判断を支援する仮説と検証が含まれている。今回から、新たに気になるストアの「関連本」情報、著者別のカタログまで吸い上げているほか、これまで指摘された方法論的問題点の修正にも引続き取組んでおり、データ・ガイのプロフェッショナルな姿勢を示している。AERが示すトレンドは変化がないが、毎回のレポートには、工夫の跡が見られ、新しい発見がある。例えば、年間1万ドル以上を稼いだ著者が、昨年9月の5,600人から9,900人に増加した。シンデレラではない、新進・中堅の著者が確実に生活を続けられることが重要だ。

自主出版が単純にすばらしいとか、儲かるとか、在来出版はもうだめだとか、間違った結論に飛びつかない限り、レポートから得られる情報は非常に多い。本の執筆や出版は労力に比べてリターンの多いビジネスではない。ほとんどの著作、著者はそれに見合う収入を得ていないことは未来永劫に変わりそうもない。しかし、大成功ではなくても、出版の意欲を持続させられるビジネスモデルが、大出版社や在来出版の外にも生まれてきたことは、出版ビジネスの性格を変えるだろう。このことについては別に考えたい。 (鎌田、06/06/2016)

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