Litsyが目ざす新しい「体験」のプラットフォーム

litsy_logo_horiz本についてのユニークなSNSコミュニケーション・ツール Litsy が、4月にiOSアプリとしてデビューした。ショート・メッセージング・サービスとしては、Twitterや Instagramと部分的に競合するものだが、これを始めたのは、ヴィンテージ本の表紙をTシャツやトートバッグにプリントして販売するOut of Printで、読書体験の拡張を意図している。

本の表紙がつなぐソーシャル・ネットワーキング

iphone_litsy4_screenPublishers Weekly (6/10)のエド・ナウォトカ氏の記事によれば、Litsy(リッツィ)を立ち上げたのは、Out of Print の共同創業者、トッド・ロートンとジェフ・ルブランの両氏で、これが「人々が本について語るきっかけと場を提供する」というミッションの延長であることを強調している。表紙は本の顔であり、とくにヴィンテージ本(あるいはベストセラー)の表紙は、人々に読書体験を想起させ、語り、他の人々とつながるきっかけを与える。本好きなら、愛読した、あるいは強い印象を受けた本の表紙を忘れないから、たしかにアイコンとして機能するだろう。もちろん、新刊のマーケティングにも使えるし、Litsyのビジネスモデルはそこにあると思われる。しかし、ソーシャル・ネットワーキングのビジネスモデルは、それが個人と社会をつなげることに成功した後に生まれる。

「私たちは、本の読書体験は、人生の様々な瞬間を通じて何度も再現されると考えています。そうした経験を反映させるプラットフォームをつくりたいと考えました。Litsyは、本の記憶から自然に浮かんだことや愉しみを綴り、共有する場です。」とロートン氏は語っている。フォーマットは、推薦/引用/寸評の3種類のなかから選ぶことができ、読者は 'like' を表明し、写真や絵文字を付けたり、自分の本をスタックしておくことができる。文字数は300字以内なので、以前のTwitterやSMSの倍くらい。短いが、最初はこれが重要なのだろう。Goodreadsのような、書評中心のソーシャルサイトに対する独自性にもなると思う。

本から始まり、本に還る「体験」のサイクル

iphone_litsy7_screenタイトルのデータは、GoogleとIngramから提供されたものを使用し、必ず刊行本に言及する。「本から生まれた会話は本に返すべき」とロートン氏は考えている。Litsy を使うことで立派な書店に足を運ぶような感覚が生まれ、そこで本を手に取って読書体験の交流が始まる、という流れを期待している。

4月にスタートしたアプリは、これまで2万人以上のユーザーを惹きつけ、出版社や書店、著者はソーシャルメディア・マーケティングのツールとして使っているという。作家のジョー・ヒルは新作 'The Fireman' の発刊前のプロモーションに使い、17本の寸評、18本の引用、66本の推薦を含む101人からの投稿を得た。likeは2,274本でコメントは250、798人にスタックされている。ここまでになれば、かなりの波及力になるだろう。2万人のユーザーでこの密度が得られたということは、プラットフォームとなる資格は十分にある。

次のステップは、この夏にAndroid版を出してさらに機能を拡充することだが、現在のビジネスモデルは広告だけだが、ロートン氏はさらに拡大することを考えているようだ。At Out of Printでは、6年間で200万以上の商品を販売したそうだが、アパレルからソーシャルメディアと「ビジネス」は変わっても、テーマが不変なのは立派なことだ。アイデアは世界的に通用するもので、グローバルに展開することでさらに体験の交流が生まれることを期待したい。 (鎌田、06/16/2016)

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