出版社のロングテイル:浸透するPoD

PoD_RicohBook Business Magazine (5/27)に、リコー (Inkjet Technologies)のロブ・モールキン氏が「絶版本の死はすぐそこに」という楽しい記事を書いている。もちろん、プロモーションにつながる話だが、大手出版社にも普及しつつある動きを反映していて参考になるので紹介して、PoD出版の可能性を考えてみたい。

小部数再版は出版社の新しい収入源

POD-in-Colorモールキン氏によれば、PoDは在来出版社で顕著に伸びている。小部数印刷需要に応えるためだ。現在の焦点はカラー。とくに4色印刷本の多くはアジアに外注されており、最低ロットは1,500部あたり。1色刷の需要はアマゾンやイングラムのLightning Sourceがかなり幅広く対応しているが、4色刷の既刊本の再版は手つかずだった。インクジェット・プリンタの高性能化で、ここでも少部数・低コスト印刷が可能になっている。

小部数印刷は流通モデルを抜きに考えることができない。受注はともかく、配送まで書店を通すことがつねにベターであるとは限らない。出版社による直販を検討することを勧めている。モールキン氏は、出荷支援/管理機構の有無がコストを左右すると述べている。宛名印刷や梱包、出荷管理までプリンタで対応する。在庫切れ既刊本のPoDは、出版社の新しい収入源とすることが可能だが、それには、請求・決済処理も含めた新しいワークフローをもとに組立てたプログラムが必要で、日常業務に押し込むことでは対応できない。

専用のビジネスプロセスと最適化モデルが必要

周知のように、印刷本には「絶版」というものがあり、紙型を使っていた活版時代から、フィルム/写植、デジタルデータと姿は変わっても、再版にそれなりのコストと決断を要することは変わりない。もちろん、印刷単位が小さいほど1部当たりのコストは高くなり、価格設定はさらに難しくなる。E-Bookは「一つの」解決だが、印刷本への需要をすべて置き換えることは出来ない。再版需要は、出版社として重視したい読者層から毎年一定の需要がある(利益率が低いが)重要なタイトルでとくに問題になる。影響力を持った既刊本の版を絶やさないことは版元としての社会的責任、と考えるうるさい(貴重な)顧客もいるが、赤字再版はどこもやらなくなっている。伝統的出版社は、細っても消えない再版問題と直面している。

process_managementモールキン氏も言うように、これを収益源とするには、印刷・制作以外にかなり細かいプロセスを組み立てる必要がある。初版とまったく同じには出来ないので、別の標準仕様も決めなければならない。販促・受注・決済・配送・サポートも含めた体制が必要だ。しかし、スムーズに流れるようになれば、印刷出版のビジネスモデル、あるいはE-Bookを含めた採算モデルを再構築することも出来る。

現在の「モデル」は、書店の陳列棚の処理能力を前提に、最初の1~3ヵ月で5,000~1万部以上売れなければ出版プロジェクトは失敗、という極度に成立困難なものだ。これでは企画に乗るジャンルも狭くなり、編集者、著者も萎縮する。PoDが、ビジネスプロセスに対応するよう進化していることは、心強い変化といえる。 (鎌田、06/02/2016)

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