ハーレクイン社が著者と版権料で「和解」

harlequin_logoハーレクイン社のE-Book版権料支払に関して、著者たちが提起していた集合訴訟(2014)が和解で決着し(6/30)、H社は原告に対して約410万ドル(うち100万ドルあまりは法務関係費用)を支払うことになった。出版社側は不法行為を認めず、面子を失わずに善意で和解したということになるが、一審では完全勝訴していた。

被告側が和解を急いだ背景

Harlequin_booksこの訴訟は2012年、ハーレクイン社から出版していた3人の著者(Barbara Keiler, Mona Gay Thomas, Linda Barrett) によって起された。理由は、E-Book版の版権料の算定ベースが原契約条項に照らして不当に低いというもの。翌2013年4月に、ニューヨーク地裁のハロルド・ベアー裁判長は、略式判決でハーレクイン側の勝訴とし、著者側の4件の主張をすべて却下した。しかし2014年の控訴審は、うち3件については地裁の判断を支持したものの、肝心の1件 (不当利得)について審理が必要として差戻しを言渡した。その後調停に入り、今年3月に合意に達し、4月にはウィリアム・ポーリー(III)判事の承認が得られていた。

ハーレクイン社は2014年3月にハーパー・コリンズ社に買収されていたが、本件の決着にHC社の意向が反映されたことは確実と思われる。不当利得 (unjust enrichment)をめぐる審理の継続は、時間を経るほど出版社にとって不利なものとなる可能性が強い。理由はおそらく以下のようなものだ。

  • E-Bookの版権料は、現在の出版契約の最大の争点であり、HQに限らず訴訟は増加している。
  • 著者の不満は、自主出版モデルを選択する著者の増加となって出版社に脅威を与えている。
  • 著者はE-Bookを重要な収入源と期待しており、出版社への不信を強めている。

出版社は著者を敵にできない

HQは独自の流通ネットワークによって地位を築き、それが著者や書店に対する交渉力の源泉であった。アマゾンを中心に形成されたE-Book市場は、同社に大きな利益をもたらす一方で、著者との安定した関係を流動化させている。Authors Guildが主張するように、印刷本時代には著者と出版社の関係は「互恵平等」と感じられたが、コスト構造が異なるE-Bookでは印税率の意味がまるで違ってきた。著者たちは搾取されていると感じている。HQのケースで裁判所が「不当利得問題」を審理する方針を示し、HQ=HCがそれを嫌って和解に応じたのは、この問題が法廷で審理され、証人喚問や公聴会、証拠開示などを通じて公然化することを嫌ったためだろう。Publishers Weeklyは、こうした背景に触れていない。

筆者は、アマゾンが提起したE-Bookの価格問題(コストが安いデジタル版の小売価格は10ドル以下が妥当)に大手出版社が(市場を圧殺してまで)徹底的に抵抗しているのは、著者との配分見直し問題に直結するためだと考えている。今回の和解で、HQは400万ドルを失った。著者一人当たり、あるいは契約当たりでいくらになるのかは見当がつかないが、そう軽いものではないだろうし、今後の契約条件に反映されることになるだろう。いずれにせよ、時間が大手出版社の有利にならない状況は変わらない。大企業の人々は時間がつねに味方になるという発想をしがちなものだが、E-Bookの価格・版権料問題では、アマゾンという規格外の存在があり、著者を敵にできない以上、持続可能な解決条件を自ら考えるしかない。 (鎌田、07/14/2016)

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