正規化するインディーズ (1)

ALLI-logo-lined自主出版は大方の予想を超えて発展してきたが、在来出版社が書店と印刷本を優先したせいで、もっぱらアマゾンとE-Bookを中心に成長した。いま、英語圏を中心に、課題として意識されているのは、これを出版の秩序にどう整合させるのかということだ。そこには様々な立場がありアプローチがある。

出版手段の一般開放は何をもたらしたか

PublishingPerspectivesPublishing Perspectivesのポーター・アンダーソン編集長は、このテーマを考える際に欠かせない2人の人物、アマゾンでKDPを立ち上げたジョン・ファイン氏(現在はフリーの弁護士)とインディーズ作家団体の Alliance of Independent Authors (ALLi)創立者で事務局長の作家、オーナ・ロス氏に話を聞いている。

徒手空拳の「著者」が、オンライン書店から本を「出版」して、はたしてプロとしてやっていけるのか、つまり本と著者がデジタルだけを足場に再生産されるのかを疑問視した出版業界は、E-Bookと自主出版の2つを、厄介な問題として直面することになったのだ。それも驚くほどのスピードで。本誌は、自主出版がデジタル(インターネット)に最適化されたものとして生まれ、21世紀の出版のあらゆる可能性と問題点を包含していることに注目してきた。市場に定着した現在、問題はそれが著者の執筆・創作活動を助け、多様で質の高い書籍への読者のアクセスを拡大する方向に向かっているか、ということだ。ファインとロスの両氏は、現在がまだ新しい時代の入口にすぎないことをよく認識している。

先は見えないが後戻りは不可能

E-Bookによる出版プラットフォームの一般開放は、言っていれば「出版(手段)の民主化」で、いわば「言論の自由」と「普通選挙」の実施で、これが民主主義の制度的前提であるとしても、それが社会の経済的社会的向上につながる保証はまったくない。同様に、それまでは出版で落とされてきたコンテンツが日の目を見て、少数の成功者をみたというだけで、出版が進化したとは言えない。はっきりているのは、ゲートキーパーが出版の可否を判断していた昔に戻ることはない、というだけだ。

現在のところ自主出版は「非出版社による出版」という消極的なものでしかなく、プロもアマも、営利(あるいは生活)を重視する人もいれば、書く喜びと読者を求める人もいる。求めるものが違う著者たちに対して最適な環境は存在しない。読者は読むに値する著者の価格に見合った本を求めているとしても、対象の数に比べて十分な質量の判断材料を持っていない。市場において重要な存在となった現在、課題を整理し、自主出版物を受け容れる社会的環境が必要になっている。

KindleにおいてKDPを重要なビジネスモデルの一部として成功させたアマゾンは、著者をカスタマーとする転換を行ってきたが、それは同時に著者をその目的によって区分することでもあった。興味深いのは、インディーズ団体でも職業作家を区別し、そのプロフェッショナルな活動を支援する方向を打ち出したことだ。これは市場という意味での社会性への対応といえる。 (鎌田、07/12/2016)

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