深まる米国出版統計の謎

200Iceberg米国出版社協会(AAP)は2015年の年次統計(確定版)を発表した。売上は277.8億ドル、部数は27.1億。いずれも前年比でほぼ横ばい(0.6%減)を示している。では市場は無風だったのだろうか。そうではないと考えるべき兆候は多いが、あまりに多くの取引が、在来統計の網からは漏れており、そのギャップが拡大している。

印刷本復活とE-Book没落というストーリー

aap-logo-280x150AAPのStatshot Annual (SS-A2015)は、商業出版社1,800社から提供された数字をもとに、市場全体を推計している。いつものことながら、アマゾンの扱いが8割に近く、商業出版社のシェアが不明なE-Bookに関する数字には大きな疑問符が付く。E-Book市場は縮小に転じているのか、それともAAPの統計が捕捉していないチャネルで拡大しているのか。Author Earnings Report (EAR)の四半期毎のデータによるならば、市場は別の姿を示す。E-Bookは拡大し、商業出版社はE-Book市場でのシェアを急速に失っていることになる。

SS-A2015によれば、ハードカバーは49.8億ドルから54億ドルに8.4%の上昇、ペーパーバックも50.9億から52.3億ドルに2.7%と上昇した。オーディオブックは37.6%の高成長を持続し5億ドルに。他方でE-Bookだけが11.3%と下落して28億ドルとなった。AAPのティナ・ジョーダン副会長は印刷本の復活と健在を力強く宣言したが、それは非活字本と言える塗り絵本の大ヒット、そしてインディーズ出版の拡大、アマゾンの印刷本値引販売による「偽りの復活」の可能性を示すものだ。統計数字の信憑性は、マクロ経済でも大きく低下しているが、それは市場の構造変化をリーダーたちが認めないことからきている。

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整合性のない孤立した数字は何を意味するか

The Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏は、他の多くの調査の数字との整合性がとれないことを指摘し、今年のSSを「インチキ」と決めつけた。最も詳細と言われるNielsen BookScan、政府統計局の書店販売額、大手書店や独立系書店団体の発表数字との矛盾のほか、AAPがカバーする出版社の数字を合計しても、米国の印刷本市場の40%しか捕捉できていないとも言っている。Monthly StatShotsを含めた他の調査では見えない幻の取引が、SS-Aでのみ計上されているとも。

SS-A2015は、既成出版社が期待していた数字(印刷本の復活)を提供したが、どうやらそれは書店を通さない数字を含んでいる可能性がある。その大部分がアマゾン経由である可能性もある。昨年末に新聞によって伝えられた印刷本と書店の「復活」というストーリーに沿ったものでないことを願いたいが、どうであれ検証が必要だ。 (鎌田、07/14/2016)

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