バックリストからE-Bookの女王へ

open-road-media2009年米国に誕生したデジタル出版社Open Road Integrated Media (ORIM)は、ランダムハウスとハーパー・コリンズで「再版の女王」と呼ばれたジェーン・フリードマン氏によって創業された。彼女は6年あまりの会長兼CEO兼発行人の在任中、2,000人以上の著者の1万点以上のE-Bookを発行して名実ともに「E-Bookの女王」になった。

ハーパー・コリンズCEOからオープンロードへ

Jane Friedmanフリードマン氏は今年6月にCEO兼発行人を後任(Paul Slavin)に譲り、現在は引き続き新規プロジェクトに取組んでいる。デジタル・マーケティングを駆使した同社のアプローチはすでに大きな成果をもたらしており、おそらくロールモデルになると思われる。大手出版社のトップを経験した人物では異色だが、デジタルでの成功は在来出版時代に培われた経験とアイデアに依るものだろう。

米国出版界で「バックリスト」は、新刊本(frontlist)に対して既刊本を意味する。伝統的な出版ビジネスモデルではロングテイルの部分にあたり、売上の25-30%、利益ではそれ以上を占める。つまり再版によって出版社に長期的利益をもたらすものとされている。しばしばギャンブルに例えられる新刊と比べると利益が期待されるが、地味な仕事のために社内評価は低く、「女王」の尊称を得たのは、彼女がこの仕事の価値と方法を独自の仕方で発見し、認めさせたことを意味していると思われる。ハーパー・コリンズではCEOを務めた。

彼女は過去に出版された価値あるタイトルに新たな活力を与える仕事に取組むなかで、適切なマーケティングとプロセスによって再版の利便性、コストを改善する方法を模索していた。KindleによってE-Bookの市場が生まれた時、デジタルに目が向いたのは自然なことだ。Open Roadのスタイルは、E-Bookで出版したいタイトルのリストをつくり、版権者にアプローチして出版し、独自のマーケティング・プログラムで確実に結果を出すこと。6年で1万点というのは、年間1,500点以上、月間130点以上、毎日…という凄まじい数になる。

デジタル・マーケティングが成長の原動力

earlybirdbooks-logo最近出した作品の中には、日本でも人気があるアラン・シリトーの『長距離ランナーの孤独』がある。最も成功したのは、パール・バックの『大地』で、100万ドル以上を売上げた。現在検討・交渉中のタイトルは明らかにしないが、まだデジタル版がないグレアム・グリーンとJ.D.サリンジャーが含まれているという。リストは膨大だが、版権者が著者の複数の遺族、関係相続人にまたがっており、交渉にはかなりの時間を要するようだ。

lineup_openroadフリードマン氏はハーパー・コリンズのCEOだった時代から、E-Bookの将来性を確信してはいたが、印刷本に取って代わるとは考えていなかった。デバイスが普及した現在でも、50%辺りが限界がくるだろうと言う。現在は37%という推定があるので、まだ伸びるだろうということだ。大出版社のE-Book販売は下降の一途だが、それは単純に価格引上げのせいだ。彼女の会社は今年初め、前年同期比40%の売上増を達成した。

Open Roadの売上は依然として伸びている。しかし、成長を重視する同社は、3,000万ドル近くを出資している投資家への配当は行っていない。デジタル・マーケティングやオーディオブックを含むE-Book以外の市場への投資を継続するためだ。新しいプロジェクトには、日刊ニューズレターで日替わり特売を告知する EarlyBirdBooks.com、特定コンテンツにフォーカスした The Lineup がある。それについては別の記事で取り上げる。  (鎌田、10/27/2016)

参考記事

Scroll Up