反デジタルが生んだ「衰退と安定」

aap-logo-280x150米国出版社協会(AAP)は11月16日、今年上半期(1H)の売上を発表し、全体として前年同期比で3.4%ダウンしたことを明らかにした。一般書は、1Qに6.7%落ち込んだ後の2Qで4.6%増の回復を見せたが、1Hでは1.1%減に終わった。E-Bookはじつに20%の減少で、昨年に始まる「脱デジタル」と「大手の衰退」傾向はまだ止まらない。

低迷が続く在来出版社の2016年上半期

1Hの総売上額は30.3億ドル(-1.1%)。2Qでは成年向け、児童書、宗教書が上昇したが、トム・アレンCEOによれば、これは映画とのタイイン効果、中小出版社の健闘、宗教書の急回復など複合的な要因によるらしい。大ベストセラーによるものではないということだ。しかし、6月の数字は1Qに回帰したような4.7%減で、後半の見通しに影をさしている。1Hフォーマット別では、ハードバックが0.9%増の9億8.970万ドルと前年同期とほぼ同じ、ペーパーバックが8.8%増の10.1億ドル。デジタルでは、E-Bookが20%減の5億7.950万ドルで、A-Bookが32.3%増の1億2,670万ドルと、同じデジタルでの明暗を分けている。

AAPの統計は、会員企業1,000社あまりの書籍販売額(書店卸、直販、オンライン)を集計したもの。商業出版社の出版収入に相当する。印刷本ではAAP統計が市場の8割近くを代表すると考えられているが、E-Bookのほうはアマゾン/自主出版というチャネルが拡大することで、非出版社流通のほうが大きくなっていることはいつも指摘する通り。

衰退と引換えに得た安定

下の図はAAP出版社のフォーマット別構成比を5年半分まとめたものだ。2013年まで急成長を続け、売上の4分の1を占めたE-Bookは、2014年を境に減少に転じたのは、もちろん価格の引上げによるもので、今年前半には20%を割った。A-Bookを加えてデジタル25%というのは、大手出版社にとっては目標であったのだろう。それによってHB+PBで3分の2という水準は維持されている。

しかし、この価格による人為的操作は、出版社の売上構成を保つことには成功しても、出版市場における在来出版社の地位を引下げる結果を招いている。アマゾンの市場支配は弱まるどころか強まり、デジタルを牽引車として出版市場が活況を呈するという、2013年までのトレンドは逆転した。利益率という、この成熟産業では最も評価される指標も逆転し、低下している。E-Bookが委託制になって30%の手数料を保証されたアマゾンは、その利益で印刷本だけは買ってくれるという構造だ。

大出版社が思い描いていた市場のイメージが、閉鎖系としてのシステムであったことは明らかだろう。しかし、アマゾンの登場によって、出版市場は閉鎖系ではなくなっている。まずオンライン書店がB&Nなど地上の大手流通を制したことで、大出版社の市場支配は終わり、次にデジタル・コンテンツが自主出版というビジネスモデルを生み出したによって出版社と著者の関係も相対化された。E-Bookの価格引上げは、著者と読者の両方を、同時に遠ざける自滅的手段だった。誰でも思いつけることではないが、出版社の売上構成が市場であるという錯覚を信じることにしたのだろう。

これは本誌が言い続けてきたことだが、下の「構成比」グラフは、なぜそんな愚行が可能だったかを示していると思われる。出版社は出版が閉鎖系だと思い込んでいる。彼らは、とにかく目標を達成し、構成比を維持することには成功した。しかし、ビジネスでは確実に失敗している。大手出版社は、これから現実を相手にしなければならない。著者と読者の両方に振り向いてもらわなければならないからだ。そうした意味で、2017年は決定的な年となるだろう。 (鎌田、11/17/2016)

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