アマゾンは11月14日、ソーシャル・ボットのAI会話技術の開発普及を目的にした Alexa Prizeコンテストの選考に残った12の大学チームを発表した。22ヵ国から100以上のチームが応募し、うち12チームにアマゾンから資金が提供される。この戦略技術の立上げに成功した同社は、いま「ソーシャル」なアイデア/技術を必要としている。
ソーシャルな技術をソーシャルに選ぶ
人間とのコミュニケーションのために開発された対話型ロボット技術を、米国ではソーシャルボット (socialbots)と呼ばれている。直接的にはソーシャルメディアのアカウントを管理する自動化されたソフトウェアだ。ロボットではなく、ネット上でユーザーのために、あるいはユーザーになり替わって気持ちよく、そつなく対応することが求められる。Alexaが求めているのは、ユーザーと打ち解けて話し相手になり、世間の話題やニュースを伝えたり、時には買い物の手伝いなどをする存在だろう。
コンテストはアマゾンAlexaの開発責任者であるロヒット・プラサード副社長が中心になって行われるもので、ビジネス色の強いイベントだ。最高のパフォーマンスを発揮したチームには50万ドルが贈られ、20分間、中断なく、退屈させずに相手が出来たボットには、別に100万ドルが所属大学に贈呈される。参加チームには10万ドルの奨励金とAlexaデバイスとAlexa Skills Kit (ASK)チームのサポート、AWSクラウドが提供される。来年4月には、一般のAlexaユーザーが参加した、世間の話題を題材にしたトーク・セッションも予定されている。発表と表彰は来年11月というから、かなり長丁場となる。
Alexa賞は、「ソーシャル」な技術を「ソーシャル」なプロセスで選出する、かなり手の込んだイベントだ。ここまでやるのは、インタフェースを扱う技術の性格による。これまでのUI技術が人とコンピュータの間のインタラクションだったのに対し、「ソーシャルボット」はパーソナルで、個人情報を扱い、親しくもなれば嫌いにもなり、役にも立てば邪魔にもなる、きわめてあぶないものとなる可能性が高い。
ビッグデータと深層学習の時代に入ったAIがUIをコントロールすることの危険を、アマゾンは(十分かどうかは不明だが)認識していると思われる。開発・選考プロセスをオープンにすることは、リスクをヘッジするためでもあるだろう。AIは「機密情報」とされやすいものだが、オープンにする部分をつくっておかないと、開発・採用企業にとって重大な問題を招く危険もあることは、マイクロソフトのチャットボットTayがヒトラーを「支持」した事例で示された。
なお、日本の「ソーシャル・ロボット」は接客を主とするヒト型(あるいは動物型)ロボットに向かうのに対して、偶像崇拝を禁じる文化圏の「ソーシャルボット」はソフトウェアが実体で、外観などはほんのスキン(GUI)にすぎないので、「ボット」とは区別しておいたほうがよい。◆ (鎌田、11/17/2016)