メディア・ビジネスに注力するアマゾン

amazon_logo_xアマゾンは10月27日、Q3 (7-9月)の四半期業績を発表した。売上が前年同期比29%増の327億ドルだったが、一株利益が52セントと市場予想の78セントを大きく下回ったため株価は6%下落した。内容は悪くないが「配当より投資」という経営方針が嫌気された。営業利益は42%増で、打ち出の小槌となったAWSは55%増と止まらない。

成長鈍化するメディアビジネス

北米の3Qメディア販売は、紙とデジタルを含めて32.4億ドルで3Q15(30億ドル)から8%の上昇。ただし、アマゾンのビジネス全体の中でのシェアは11.8% (3Q15)から9.8%と縮小している。年間で1兆円を超える規模に達しても、この「低成長」あるいは「傾向としての成長鈍化」はアマゾンにとって許容できるものではないと思われる。

赤字を出していた時代を含めて、この会社は20%台後半の売上拡大を最優先し、それを可能とする投資を続けてきた。AWSの高収益は、成長志向経営に新たな推進力を与えており、アマゾンとしては躊躇なくこれを戦略的投資に向ける。客観的に見て、現在ほど投資コストが安い時期はそうないからだ。アマゾンの投資は、したがって少なからぬビジネス(と人々の生活)に大きな影響を与える可能性が高い。配当を求める投資家を別として、重要なことは、インフラとメディア・ビジネスにどのような投資が行われるかだが、そこに注目する人はそう多くない。

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メディア関係で筆者が注目しているのは、(1) Echo/Alexaプラットフォーム、(2) ローカル書店の展開、(3) アマゾン出版の世界展開、(4) コンテンツ、(5) PoDなどサプライチェーン整備、だ。Echo/Alexaがメディア消費を拡大することは実証されており、これが成長を牽引することを計算しているだろう。書店については前号で述べたが、パイロット店は「非常に満足すべき」結果のようで、来年以降の本格展開が確実視されている、アマゾン出版の世界展開は、新興市場のインドから始まった。すでに在来出版社の買収やスタッフの募集も進んでおり、来年からのスタートと見られる。市場性は高いが、必要な投資額もかなりのものとなるとみられる。

宇宙工学的経営は当分敵なし

アップルの創業者、ジョブズ氏は無配方針を終生貫き、巨大な内部留保を積み上げて、それを経営における自由の原資とした。株主が自分を追放した1985年の屈辱を忘れなかったためか、1セントも渡さない厳しい姿勢をとったが、求道者的独裁者はメディアやファンから支持された。利益は成長に回すというベゾス氏も基本的には同じだが、アマゾンは貯めずに使う。もちろん、余ったら使うのではなく、計画通りに余らせて投資に回すキャッシュフロー経営を忠実に実行している。ジョブズ氏のような人間的苦悩は微塵も感じさせず、学生時代に目ざしたロケット工学のような精密な計算が前面に出ているので、アナリストも口を挟む余地がない。冒険をしているというドラマ性もなく、メディアからも好かれない。ベゾスの経営が永遠ならば、新世代のテクノクラートによる「工学的計画経済」すら可能になってしまいかねないからだ。これは主流派からすると「反資本主義」に近い。

space-station最近、AWSを率いるアンディ・ジャシーVPは、「アマゾンは、失敗を怖れる必要のない稀な会社。『まだまだ多くの大失敗に向けて働き続ける』という言い方が気に入っています。」と語っている。Fire Phoneの失敗をEchoの成功に繋げたように、アマゾンは失敗に強いが、これは失敗の可能性を計算し、バックアップ・プランを用意していることで可能になる。失敗をしたことで成功のヒントを得ることは珍しくないが、アマゾンの場合は、そのことまで計算して計画しているのだ。ビッグデータによって最近ビジネス利用が進展しているAI技術が、そうした計算の精度を高めていることは想像に難くない。アマゾンの「宇宙工学的経営」は容易に真似ができないだろう。アマゾンの場合は、ビジネスモデル、プロセス管理、組織のすべてが工学的につくられているからだ。 (鎌田、11/01/2016)

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