Editions At Playとブックデザインの再構築

visual_editionsGoogleとの提携の下に今年から「本を再発明する」プログラムとして Editions At Play (EaP)を推進しているロンドンのブックデザイン会社 Visual Editions は、新年春に新刊2点をリリースすることを発表した。詳細は何も明らかにしていないが、既刊の4点から、コンセプトや傾向の一部を知ることが出来るかもしれない。

新しいストーリーテリングの実験

ブログによれば、2点はオリジナル・ファンタジー作品で、オーストラリア・シドニーのGoogle Creative Lab と共同で開発している。実物を見ないとなかなか想像できないが、もつれたストーリーの間に埋め込まれた、読者の想像力を解放するイラストレーション(Charlotte Hicksによる)の視覚効果などの仕掛けがあるらしい。これは新しいストーリーテリングの実験環境でもある。

EAPプログラムは、静止的・固定的な本のイメージを脱却し、Web上で流動的な版(edition)を中心コンセプトと打ち出している。エディションは過去の出版の継承・発展をイメージさせるものだ。そして 'Play' は、いじくれる (playable)とGoogleの緩いWebプラットフォーム/ストアに懸けたものだろう。

Webで開放される本の新しい世界

これまでのE-Bookのあまりの保守性には失望した人は多いはずだ。「ガラスの下の本」は、単純に読む以外の機能は極度に制限されていて、ビル・アトキンソンのHyperCardや、LAN/PC環境の20年前のデジタル・ドキュメントが実現していた多くの機能がまだ封印されている。E-Bookのデザインは、プラットフォーム(サーバおよびデバイス)の制約が大きく、オーサリング・ツールの発達がOS/アプリケーション中心時代よりも遅いためだ。出版者・デザイナーの自由を拡大するオーサリング・ツールがKindleにプレッシャーを与え続けないと、E-Bookでは停滞が続く。

しかし、Webはそうではない。HTML5+CSS3+JS (≒EPUB3) が通用する完全オープンな世界では、Webドキュメント/サービスの上で、伝統的な冊子本の3次元空間から完全に解放されたE-Bookをデザインできるのだ。英国のペンギン・ランダムハウスは数年前から"Webブック”を実験している。Visual Editions はやはりこれに関わっている。Editions At Play (EaP)が目指しているのもそこで、Googleが期待するのも当然だろう。個人的には、カリグラムなど、20世紀前半に発展しそうになったまま止まっている芸術的表現形式の復活に期待している。 (鎌田、12/22/2016)

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