W3CとIDPFとの合併(と後者の解消)は、すでに時間の問題と考えられているが、OverDriveのスティーブ・ポタシュCEOなどは「IDPFを救え、EPUBを救え」というイニシアティブをデジタル出版コミュニティに向けて立上げ、合併阻止を呼びかけている。最終段階での阻止行動を事務局はどう収拾するだろうか。
IP規約をもとに合併阻止(組織存続)を目指す
1月12日の委員会声明は、ポタシュ氏のほか、Impelsys, Inc.のサミール・シャリフ、Open Road Integrated Mediaのマット・シャッツ、Firebrand Technologiesのフラン・トゥーランの各氏が署名し、公開討論への参加を呼び掛けているが、主な内容は次のようなものだ。
- 提案された合併は、実際にはIDPF資産の委譲による解消である。W3CはEPUBの維持更新に関して保証しておらず、これは妥当な条件ではない。
- IDPFの知的資産はMIT(W3Cの米国ホスト)に移管するが、会員に知らされていない。
- 「合併」案に対して、委員会は、IDPF存続に向けた10項目を起草し、資金確保の確約を得た。
- IDPFはEPUB3.1仕様をW3Cに提出するにあたって、仕様策定に貢献したメンバーの承認を求めている。これはW3Cに知的所有権を移管するための手続きである。
- 事務局は説明していないが、IDPFの著作権規約によれば、原仕様の提案会員はEPUBのMIT移管を留保する権利を付与されている。権利者はそうすることができる。
- したがって、IDPFの解消はこの一点において阻止できる。
- デジタル出版コミュニティはIDPFの存続に向けて努力しよう。
IDPFのIP規約を根拠にした行動は、あまり現実的ではないと思われる。しかし、結果がどうあれ、もともと中途半端なものでしかなかったIDPFにおける「 デジタル出版コミュニティ」の形成という課題は残っている。W3C合併後に引き継がれないとすれば、それはポタシュ氏が指摘するような「合併ではなく解消」という最悪の結果に終わることになる。The Digital Readerは、EPUB がW3Cで意味を持たなくなればISO傘下のWGというのも選択肢になる、と述べているが、これはEPUBにとっても「 デジタル出版コミュニティ」の構築にとっても良いことではないと思われる。◆ (鎌田、01/16/2017)
参考
- Save the IDPF. Save EPUB., By DBW, 01/12/2017
- OverDrive’s Steve Potash Moves to Block IDPF Merger with W3C, By Calvin Reid, Publishers Weekly, 01/13/2017
- Last Ditch Effort to Block W3C Takeover of IDPF, by Nate Hoffelder, The Digital Reader, 01/12/2017
- Request for Contributors to Co-Sign IDPF EPUB 3.1 Submission to W3C, 11/28/2016, IDPF
, 01/12/2017