マッコイ氏の「説得」の後半をお届けする。ここではW3Cという「場」が持つ意味が強調されている。IT標準化コミュニティの中心に近い人以外には簡単に理解して貰えないが、これは真実だ。狭い標準は、広い標準に呑み込まれる。HTMLとの距離が遠いほど、技術の生存可能性は低くなる。そしてEPUBは永続性がなければ使命を果たせない。
合併は出版標準のための活動の「場の拡大」を意味する
私たちは同じ人々とともに同じ仕事に取組むだろう。しかし、利用できる資源と影響力、パートナーは格段に大きい。
標準化団体とは基本的に法的地位や略名ではなく、オープンな標準をともに開発することを選択した人々のコミュニティである。その組織は技術的資産を持ち寄り、標準を採択することで作業は終わる。IDPFとW3Cが合併しても、そのことに変わりはない。IDPF EPUB作業グループ(WG)とすでにあるW3C Digital Publishing Interest Group (DPIG)は同じ人がやっている。IDPFの理事会メンバーはW3C Publishing Business Group Steering Committeeの立上げメンバーと重なる。
コミュニティにおいて誰と一緒に仕事をするかは、その肩書などよりはるかに重要だ。私たちの会議のテーブルには、まもなく何人かの人が加わるが、彼らこそOpen Web Platformがすべての出版産業に広汎に、一致して採用されるべく、EPUBその他の出版機能を整備するために必要な存在なのだ。
W3Cにいることによる最大の違いは、「出版のチャンピオン」はこの世界の唯一の存在ではなく、70名あまりの優秀なスタッフとグローバルな代表を有し、世界的な企業と経営者がついているということだ。こうした誰からも無視されない「比類ない権威」を得て、Webに私たちのEPUBと出版のための機能を売り込む能力は一段と大きなものとなる。
EPUBは、まだアクセシビリティ、プライバシー、セキュリティ、国際化といった重要な課題を解決しなければならないが、これらは他の多くの標準にも共通している。W3Cは、そうした「水平的」領域専門技術と仕様評価のプロセスを発展させてきたが、EPUBはその成果を引き出し、そして貢献することが出来る。
このことは、EPUBがすでに成立において依拠しているHTML5、CSS、SVG、XML、SMILその他何十もの標準を開発してきた組織の一部となることによって可能となる。標準の素材となる標準を調整し、それらが将来にわたって出版のニーズに応えるものとして持続的に発展させる私たちの能力は、W3Cの中にいてこそ発揮される。
出版産業はWebとともに進化する
IDPFの特許方針は、現在のオープン標準の基準に照らすと弱く旧式なもので、幸いにして出版コミュニティは無償で利用することが出来ている。合併によってEPUBはW3Cの無償モデルに移行するが、今後ともEPUBの要素技術でつくられるEPUBその他のWebプラットフォームは、誰に対しても無償公開されることが強力に保証されている(詳細はこちらを参照)。
結論:大きなコミュニティでEPUBを強くすることは出版産業を前進させる推進力となる
私自身、10年以上IDPFの活動に様々な立場で関わってきたことに誇りを持ち、この組織と活動に対して人々が抱いてきた純粋な情熱を理解し、共感するものだ。しかし、私たちは、その使命とコミュニティに対して義務を負っている。それは組織の継続よりも重いものだ。私たちのコミュニティが、その使命を効果的に推進するために真に必要としているのは、総合的で、あらゆる出版の場で一貫して採用され、無償でオープンなEPUBと出版のための機能を、Webプラットフォーム全体の前面と中心に置くことだ。このことは書籍産業だけではなく、広汎な出版産業全体についても当てはまる。W3Cとの合併は私たちのコミュニティにとって理に適った次の一歩で、コミュニティの持続的成長と成功につながるものだ。私はIDPF理事会と会員が一致してその一歩を踏み出し、私自身も引続き貢献していくる機会を得たいと望んでいる。(以上、粗訳)
◆ (鎌田、01/23/2017)